LongNovel
□うめがたいその差こそが愛おしい
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「良かったら、俺と付き合ってくれませんか?」
ああ、神様。
これって奇跡ですか?
初恋ダイアモンド
「あの、緋真姉さんは、三年の教室ですが・・・」
私には姉がいる。才色兼備の姉さんは、たくさんの人から好意を持たれ告白される、学校一のアイドル。
それに比べて私は、凡庸を地で行く平凡さ。頭も平均、運動も人並み。の私に告白?
いやいや、無いでしょ。
「三年七組ですよ、あ!何でしたら案内、」
「いや、違う違う。緋真先輩じゃなくて」
目にも鮮やかなオレンジ色の髪の男の子。知ってる、姉さんが前話してた。二年生の黒崎一護。黒崎先輩。姉さんがマネージャーを勤めるバスケ部のエース。
何度か少し、挨拶程度ではあるが、お話したことがある。
すらりと手足が長くて、整った綺麗な顔。眉間に凄くしわが寄っているにもかかわらず、穏やかなブラウンの瞳が印象的で、素敵な人だと思った。
詳しくは知らないけれど、とても明るくて人気者だと姉さんから聞いた。
たった数回、挨拶を交わしただけだけど、人気な理由がわかる気がしていたんだ。
「君に、会いに来たんですよ?俺」
「私、に?」
「そう、君に、告白したの」
そんな先輩が私みたいな地味っ子に告白?
何かの間違いとしか思えない。
罰ゲームかなにかか、なんてひとり悶々と考えていたら、
優しい穏やかなブラウンの瞳を意地悪く細め、朽木ルキアさん?て名前を呼ぶ。そして続ける、返事は?て。
「あた、し、先輩に告白していただけるような人間じゃ」
「そんなの、俺が決めることだ」
「だけど、」
はぁ、まだわかりませんか、君は。小さく息をついてやれやれといった感じ。明るくて人気者(らしい)先輩らしくない態度だ。
先輩は一歩ずつ私に近づいてくる。上履きの踵を潰しているのか、ぱたり、ぱたり、と音がする。
ぱたり、
音が、
止まる。
突然捕まれた顎、間近に迫る顔に心臓が大きく跳ねる。
端正な顔立ち、人気がでるのもおかしくない。と再確認。
「君の選択肢、はい、かわかりました以外に無いからね?」
「それ、断れないでは無いですか」
「あ、気付きました?」
あ、また、意地の悪い、でもどこか惹かれる。笑み。
「断る道は、無いんですね?」
「まぁ、そうだね」
誰もいない教室、差し込む西日。
私達はただ何も言わずにキスをした。
−END−