伊達軍

□五話
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畑仕事も特になく、掃除の手伝いも終えてしまった。ひどく暇で、何をするでもなく与えられた部屋で横になる。
東北でも夏はやはり暑いらしく、部屋の中は襖全開だが無風の今、ひたすらに熱がこもるだけだった。
「Hey!朔夜…って、だらしねぇなお前」
「あー…。政宗…珍しい、何しにきたんですか」
ちなみに政宗公とずっと呼んでいたら気持ち悪いからやめろと言われ、様付けもろくに出来なかった(どうしても公と言ってしまう…)ため、本人から呼び捨ての許可をもらった。
うんとこしょと起き上がると、政宗はニヤリと笑った。
「朔夜、ちっと匿え」
「え?は?」
混乱している間に政宗は押し入れに入ってしまう。え?なぜ隠れる。
なんだか嫌な予感がし始めると同時に、どすどすと嫌な足音が聞こえた。
「おい朔夜、政宗様が来なかったか?」
「ひぃっ」
現れたのは心底ご立腹の小十郎さんだった。いつも後ろに撫で付けられている髪がはらりと数本前に落ちている。そのせいかいつにも増して格好よく見えたりするのだが、それに比例するように怖さも増していた。
そんな小十郎さんを見て、やっと政宗の言った言葉の意味を理解した。あの野郎、執務か何かを途中でほっぽり出してきたに違いない。
今すぐ差し出していいくらいだけど、この状態の小十郎さんにしょっぴかれるのは酷と言うものだろう。政宗と一緒に小十郎さんに怒られるビジョンが目に見えたが匿ってやることにしよう。
「いえ、来てないです」
「そうか…。もし政宗様を見たら俺に知らせてくれ」
「は、はい」
すたすたと去っていく小十郎さんの背中を見て、体の力が抜けた。いやに緊張してしまうのは、やはり容姿が関係しているのだろうか。
気合いをいれるように立ち上がり、政宗の隠れている押し入れの方へ歩いていく。それから勢いよく押し入れの戸を開けた。
「Thank you朔夜。助かったぜ」
「助かってないですよ。ほら、執務室行くきますよ。何処ですか」
「な、お前…!」
「最後まで仕事が終わってから遊びに行きなさい!」
「Oh shit…。お前小十郎かよ…」
政宗の着物の襟を掴んで引きずるように部屋を出た。



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政宗さまはたまに休憩とかいって途中で仕事をほっぽりだして小十郎に怒られるといいと思う。
因みに部屋を出てからは普通に歩きました。

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