短編集
□個性
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「ちょ…いきなり何?」
今日は、獄寺君と山本で休憩してみんなでコーヒーを飲んでいた。
ハルの接点が全くないのに…
「いや、今朝コーヒー飲んでいたんです。
そしたらいきなり『コーヒー!しかもブラック!?駄目です!朝はせめて、ココアにしないと!』
っていきなり怒り出したんです。
でも1ヶ月前は朝はブラック飲んだほうがいいって言ってたんです。
だから矛盾してるから言ったのに、ハルの野郎寝室にこもって出てこなくなるし、香水も変な匂いのやつ買ってくるし、」
ずーんと音がする位ため息を吐いた獄寺がいつもより疲れているのが解る。
「あはは、朝から大変だね」
そう言うと、黙って話を聞いていた山本が口を挟んだ。
「でもハルが変なのは昔からじゃねーか、」
そう言われた獄寺は不貞腐れたように頭をかいた。
「そうなんだけどよ…」
「まぁ、香水の匂いとかは人それぞれだから…」
そう言うとまた山本が口を挟む。
「逆に個性として獄寺が受け止めないといけないんじゃねーか?」
あ、それ言おうと思ってたのに…
「…個性」
「まぁ、そういう風にも考えられるね」
先程言われた言葉を言いそびれてそう言うと獄寺は深く考え込んでいるようで返事が返ってこなかった。
「…お話中ごめんね、コーヒーおかわりいる?」
コーヒーポッドを持って現れたのは俺の自慢の妻ーーーーーーーーーーー
「ん、京子。じゃ、俺貰おうかな」
コポポポと空になったカップにまたコーヒーが入る。
「…はい!」
「ん、ありがと」
その次に山本と貰っても獄寺が貰わずまだ思案にふけっていた。
「…獄寺君はいらないの?」
「え…あ…いただきます」
現実に引き戻されたのか、はっとしている。
「獄寺君……私の顔に何かついてる…かな?」
「え!?ついてないけど…何でですか!?」
「いや、獄寺君がじっと見るから…」
そう言うと、焦りが顔に浮かぶ。
「や…悪い、そういう意味で見てたんじゃないです」
「10代目はいいなと思いまして…」
「!?いきなりどうしたの」
「こんなにできた妻そうそういませんよ、」
「///」
「京子。今獄寺君おかしくなってるから……」
「どうしたの?またハルちゃん関係?私にもお話聞かせて」
「…」
「あ、話しづらいなら話さなくていいよ。無理に聞いて、獄寺君が嫌な思いしたら嫌だから」
「いえ、話します。――――」
「―…ということです。」
「…そっか。あと、一つ言わせて」
「?」
「敬語で話すのやめて」
「いや!でも…!10代目の妻で、当たり前に敬語で話すのは普通かと…」
「でも、同い年だし!あ!でも、みんなの前では…ね。今は全然いいよ!あ!獄寺君だけじゃないよ、山本君もだよ」
「ん?俺も?」
「うん!」
「んじゃー、遠慮なく」
「…で、笹川…?てきにはどう思っ…た?」
「うーん…。ブラックが駄目って言ったのは私のせいかな。」
「え」
「実は、ハルちゃんが健康本っていうの読んでて、それに、朝ブラック飲んだほうがいいって書いてあって…
でも私があとでパソコンで調べたら違ってて、言おうか迷ってたけど、この間言ったんだ。だから、私のせい…ごめん」
「なんだ、獄寺君結構愛されてるじゃん」
「…でも怒ることない…よな!?」
「ハルちゃん焦ってたんじゃないかな?ハルちゃん焦ってるとき、いつも怒ってるように見えるから。
ハルちゃんも結構不器用なんだよ。」
「んじゃー、寝室にこもったのは?」
「あ、それは多分……!その本隠してたんじゃないかな?獄寺君の性格だったら、
『はぁ!?そんなワケ分かんねえ本買うからだ』とか言いそうだもん」
「うわ、言いそう」
「…」
「ハルちゃんとよく出掛けるんだ。それで、色々な話をするの、体調のこととか、料理のこととか、つっくん達のこととか!」
「?俺達の?」
「うん、つっくんの朝、寝癖がどうたらとか…」
「えっ!?」
「あはは、実はこの間買ってきた寝癖直しのやつ、ハルちゃんが探して買ってきてくれたんだよ」
「うわ…恥ずかし……」
「大丈夫!リアルに話してないから」
「うん…」
「…あのさ、さっきから気になってんだけど………何青くなってんだ?獄寺」
「…ハルももしかして俺のこと話してんじゃ…」
「大丈夫!ハルちゃんほとんど話さないから。きっとハルちゃん、獄寺君がそういうプライベート話話されたくないって分かってるんだよ」
「…ハル…が?」
「うん、ハルちゃんも獄寺君のことちゃんと受け止めてると思う。
獄寺君、少しハルちゃんに押しつけてるんじゃないかな、だから獄寺君もハルちゃんのこと受け止めてあげて」
「…頑張ってみる…」