短編集

□さようならと
3ページ/3ページ


《この手紙を読んでるのは京子ちゃんであると信じてます。

きっと読んでるとき俺は空港にいます。

俺は、京子ちゃんと過ごした時間は凄く幸せでした。

京子ちゃんといると自分の立場を忘れられたし、嫌な事をも忘れました。

でも、俺は立場を忘れちゃいけないんだ。

京子ちゃん、幸せにできなくてごめんね。俺ばっかり幸せを貰って。

だから…この言葉だけ言わせてください。

この言葉で京子ちゃんを苦しめるかもしれないし、つらい目にあうかもしれません。

だけど…これを読んだらすぐ燃やして捨ててください。京子ちゃん……》


『…ツナ君っ!!』


ちょうどゲートを通る前だった。

それでも振り返ることなく、くぐろうとする。

…――――最後まで私を守ろうとしている。

そう今ならわかる。ツナ君ばっか言わせておけなかった。

《京子ちゃん……

『私…私も…大好きだよ!!また…また会えるよね!!』

空港にいる人は、みんな足を止めて私を見る。

ツナ君をもう一度見ると…口元が…笑っていた。





誰に向けることなく…






《京子ちゃん……大好き。愛してる》
 
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ