短編集
□さようならと
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《この手紙を読んでるのは京子ちゃんであると信じてます。
きっと読んでるとき俺は空港にいます。
俺は、京子ちゃんと過ごした時間は凄く幸せでした。
京子ちゃんといると自分の立場を忘れられたし、嫌な事をも忘れました。
でも、俺は立場を忘れちゃいけないんだ。
京子ちゃん、幸せにできなくてごめんね。俺ばっかり幸せを貰って。
だから…この言葉だけ言わせてください。
この言葉で京子ちゃんを苦しめるかもしれないし、つらい目にあうかもしれません。
だけど…これを読んだらすぐ燃やして捨ててください。京子ちゃん……》
『…ツナ君っ!!』
ちょうどゲートを通る前だった。
それでも振り返ることなく、くぐろうとする。
…――――最後まで私を守ろうとしている。
そう今ならわかる。ツナ君ばっか言わせておけなかった。
《京子ちゃん……
『私…私も…大好きだよ!!また…また会えるよね!!』
空港にいる人は、みんな足を止めて私を見る。
ツナ君をもう一度見ると…口元が…笑っていた。
誰に向けることなく…
《京子ちゃん……大好き。愛してる》