『短編集』
□猫になったひそか
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ある日ヒソカは猫になってしまいました。
ふわふわの長毛におおわれたとっても綺麗でしなやかな白猫です。
しかし場所は森の奥ふかく。
それはちょっと変わった念能力者と闘っていた時の事でした。
相手を動物に変えてしまう能力です。
元に戻りたくても能力者を殺してしまったため方法が分かりません。
猫の目から見る世界は人間の時とは全く違い帰る方向が分からなくなってしまったヒソカ猫。
町に戻ろうとさ迷い、白く小さな足は泥だらけとなってしまいました。
なんとか小川を見つけ水を飲むことは出来ましたが食べ物がありません。
ふらふらになりながらも木に登り、方向を確認しながらようやく小さな町にたどり着きました。
民家に忍び込み久しぶりの食事にありついたヒソカ猫はたちまち元気になりました。
その家の人間の携帯電話を盗みだしたヒソカ猫は今いちばん会いたい人に電話をしようとしました。
使いなれない小さな肉きゅうの手。
なかなかうまく数字が押せません。
やっと電話がつながったけど、知らない番号からの電話に出た相手の声は少し冷たく、悲しくなってしまいました。
「ニャニャ〜。ニャアニャニャ…」
(レオ〜。ボクだよ…)
当然通じるはずもありません。
イタズラなら切るぞ。と電話を切られてしまいました。
ならばメールを打とうと悪戦苦闘していたら人間に見つかってしまい慌てて逃げだしました。
かろうじて念は使えるものの、今のヒソカ猫には猫ぱんちと猫きっくがやっとなのです。
このか弱く小さな体では人間に踏みつけられただけで死んでしまうことでしょう。
もともと他人を信用しないヒソカ猫は人間を避け、なんとか港町にたどり着くことができました。
なるべく隠れ場所の多い大きな客船に乗り込み、見つからないようにと寒い船底の隅っこに身を潜めました。
床は水浸しで小さな体はひんやりと冷え、いつ見つかるかも分かりません。
寒くて、怖くて、体の震えが止まりませんでした。
船を何度と乗り換えて、ようやく見なれた町にたどり着いころには綺麗な長毛は毛玉だらけでばさばさになり、真っ白な毛色は泥と埃で灰色にくすんでいました。