『短編集』

□パラディナイト!!
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なんで男の俺が妊娠したかって?そう。あれは1ヶ月半前の事だ。

ヒソカがどんなコズルイ手を使ったか知らんがGIのゲームクリアをしてきた。本人曰く「奇術師に不可能はないの♥」だそうだ。

ーで、クリア報酬で『願いの石』ってのを貰ってきたと言った。1ヶ月間肌身離さず持っていると願い事が叶うらしい…。
石は重さ6s。箱に入っていて色形は分からなかった。
ヒソカは一人ニマニマとイヤらしい笑みを浮かべどんな願い事にするか悩んでいた。そして突然立ち上がり、こう叫びやがった。

「レオリオがビッチになりますようにーっ♥!」
「アホかーーーっっっ!!!」

冗談じゃない!とヒソカから石の入った箱を取り上げ願い事は俺がする事にした。ブツブツと文句を言いながらも以外にヒソカはすんなりと諦めた。今思えばこの時におかしいと気付くべきだった…。



そして今朝の事だ。昨夜から泊まっていたヒソカが珍しく早起きし何やら朝からそわそわとしていた。
俺はそんなヒソカを気にもとめずトイレで小便してたらバンッ!とトイレの扉が勢いよく開きヒソカが入ってきた。
「うぉい!こんなトコまでついてくんなっ!」
俺のツッコミも無視しヒソカは背後から素早い動きで白いスティック状の棒にサッと俺の小便をかけそそくさとトイレから出て行った。

「おいっ!さっきのはなんのマネだっ!?」
「………」
トイレから出てヒソカを見ればベッドの上で正座しながらぷるぷると震えてる。
「ど、どした?」
恐る恐る背後からヒソカに声をかけると淵のような物凄い形相でぐるん!と振り向いた。本気で恐いからその顔は止めてほしい…。

そしてヒソカはニコニコと満面の笑顔を浮かべた。

「おめでとう♪レオリオ♥」
「? お、おぅ。ありがと。(何がだ?)」
「これでキミも二児のママだね♪」
「あ?あぁ。…って、はぃぃっ?」
「ふふっ♥」
「…………。」
だらだらと溢れ出る冷や汗。俺は慌ててヒソカの持つ白いスティックを奪いソレが入っていたであろう小箱を拾い上げた。

小箱には『妊娠判定試薬』。スティックの示す結果は…。

「なんでだーーーっっっ!!!」




あの石は『願いの石』なんかじゃなかった…。
実際は『身重の石』という代物で男石と女石の2つがありそれぞれの重さは3s。産みたい性別の石を1ヶ月間肌身離さず持っていると達成の一週間後に男女関係なく身籠るらしい。
俺はまんまとヒソカの策略にハマりその男石と女石、両方を持たされていたのだ。

1ヶ月もの間、仲間達が無茶をしませんように、と無事を祈りながらその石を後生大事に持っていた俺の純粋な気持ちを返せっ!!


「どーしてくれるんだっ!大学だってあるし!医者にだってなりたかったのにっ!」
「う〜ん♢大学は休めばいいじゃないか。ハンターの特権てやつ♪? 子育てが落ち着いてから復帰すればいいし、子持ちでも医者にはなれるよ♪」
「勝手な事ゆーなっ!だいたい、男の俺がドコからどーやって産むんだよっ!」
「…お尻とか♧?」
「アホかっ!腸内にガキいたらクソも出来ねーじゃねーかっ!腹切るしかねーだろがっ!なんで俺が帝王切開しなきゃなんねーんだよっ!生理も子宮も無いのにっ!男なのにっ!なんでだっ!!」
俺はかなーりテンパってた。当然だろ?妊娠だぞ?
「まぁまぁ☆ ほら、ココに名前書いて♪少しは落ち着こうよ♪」

…ああ。そうだな。冷静になって先の事ちゃんと考えねーと…。
俺は混乱した頭で訳もわからず署名欄に名前を書いた。


………署名欄?…なんのだ?


不思議に思い四つ折にされた紙を広げてみた。


…いやいや。あり得ない。………俺、疲れてんのかな…。
目頭をぐっと押さえ改めてもう一度見直した。





「あのー。ヒソカさん?」

「なんだい?レオリオ♪」

「気のせいかな?この紙…『 婚 姻 届 』って書いてある気がするんですケド。」

「うん♪書いてあるね♥」



「・・・冗っ談じゃねーっっっ!!!」

破り捨ててやろうとした瞬間。ヒソカは婚姻届を俺から奪い…逃げたっ!

そりゃもう疾風の如く速かった…。

俺は慌てて追い掛けたが追い付くはずもなく…取り敢えず行き先は分かっていたのでソコに向かった。

時すでに遅し…。

役場の玄関に滑り込んだ俺にヒソカは満面の笑顔を向けた。

「もう受理されちゃった♥うふ♪」

「離婚届の紙くれっ!」
ヒソカ無視して受付のネーチャンにそう叫んだ。同性愛に寛大な国なんてキライだ。チキショー。

「バカだなぁ♣ボクがサインしなきゃ離婚出来ないのに☆因みに勝手にサインを代筆したら犯罪だよ♪?」
人殺しの犯罪者のクセに!とヒソカを睨み付け渾身の一撃!
「マジでいっぺん死にやがれっ!」
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