立海部屋

□雨、雨、降れ、降れ
1ページ/1ページ

「あ〜、雨じゃ・・・」
「雨だな・・・」
今日は生憎の雨。6月のくもり空がどんよりしている空気を包む。
「仁王傘持ってきた?」
「すまんのう。持って来とらん」
しかも、二人とも傘を持ってきていないという不運。
「雨なんて嫌いだー!!」
雨に愚痴なんか言っちゃって。どうにもならないことなんて百も承知だけど。

「俺は好きじゃけどなぁ」
隣に立っている仁王から聞こえてきた意外な言葉に思わず顔を顰めた。
「何でだよぃ」
「やってブンちゃんと一緒に居られるけぇ・ラッキーじゃろ?」
さらっと、顔が真っ赤になるような恥ずかしいセリフを清々しく平気な顔で言って、キスをしてくる目の前の男が心底憎く見える。
だって、そんな事を言われると返す言葉なんてあるわけないじゃないか。

この真っ赤になった顔を隠すように俺は雨の中へダイブした。
足元の水たまりが勢いよく跳ねて、俺のズボンの裾に染み渡る。
雨は相変わらず土砂降りだった。

 もっともっと雨なんて土砂降りに降って、
 俺の顔を隠してしまえ。

「二人っきりの時間なんていくらでも作れるのに」
呟いた言葉は雨の音にかき消されて、重力に従って落ちて行った。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ