長編部屋
□2、崩れていく日常
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「あー・・・・・・」
誰もが嫌いであろう夏の暑さに唸りながら、ベンチにもたれて太陽を睨む。
地面からはじりじりとした熱気が溢れ出し、遠くで何やら指導している聞きなれた声も今はまったく耳に入ってこない。
「うー・・・・何で夏はこんなに暑いんだよぃ」
そう、もう夏は始めり夏休みに入っているのだ。
蝉の鳴き声と、ぎらぎら照りつける太陽。じりじりとした暑さがそれを物語っていた。
「まぁまぁ。ブンちゃん帰りにかき氷奢っちゃるから駄駄こねんと」
あまりの暑さに唸るブン太を宥め、仁王は苦笑しながらベンチにもたれる首に冷たいタオルを当てた。
「つめてっ」
「ほれ、どうじゃ。気持ちいいじゃろ〜?」
そのまま、キンキンに冷えたタオルを綺麗な赤毛に乗せ、くしゃくしゃ髪をかき混ぜる。
「うひゃっ!冷たいってば!」
きゃっ、きゃっ、とブン太の楽しそうな笑い声が響く中、コートで練習をしていたレギュラーメンバーが二人に近寄ってくる。
「仁王、ブン太、何やってんの?」
部長の幸村がすかさず仁王の頭を叩いた。
「いたっ!」
「はは、仁王どんま〜い!」
叩いた割にはゴンッ、鈍い音がし、叩かれた仁王は痛みで頭を押さえる。
その横でブン太はげらげら、なんとも楽しそうに笑っていた。
「何で俺だけなんじゃ!!」
「仁王うざいから。んで、ブン太可愛いから」
「理不尽じゃ!!」
「だって、俺可愛いもん」
「はい、うるさいよ。五感奪われたいの?」
「すみませんした」
「おし、じゃあ部活やろうね?」
二人が悪ふざけをし、それを部長が怒る。
いつもの部活の風景が変わらない日常の一コマに今日も溶けていた。
はずだった。