その他CP部屋

□せめてあなたの隣で
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「・・・・・・」
「・・・・・・」

沈黙と雨の音だけが流れる部屋に耐え切れなくなった跡部はついに横にあったテーブルを思いっきり叩いた。

ドンッ

その瞬間驚きで仁王の方がかすかにビクッ、と
揺れる。

「何がしてーんだよ、てめーは!」
ただ訳が分からず怒りに任せて怒鳴った。
「・・・・・・・・」
しかし、仁王は相変わらずの無言のまま。
「ちっ」
手塚よりも無口な野郎だ、と思いながら部屋を今度こそ出ようとした。

ドアを閉める寸前にちらり、と仁王の方を見ると肩を震わせ、膝を抱えたままベットに座っている。

バタン、

跡部はドアを閉めた後もそこで突っ立ったまま
動けなかった。
ただ、胸がざわざわして頭の中であの仁王の光景がよみがえり、居心地が悪い。
「くそっ」
結局すっきりしないと嫌な性格は中3になってもついてくるようで、仕方なく部屋に戻る。

バタン、

ドアが閉まる音を背に俯いてる仁王の顔の前まで来て、しゃがみこんだ。
「・・・おい・・・」
さっきのように肩をたたくと、仁王が顔を上げる。
今日初めて見せるちゃんとした反応だ。

「てめー・・・・」
仁王が顔を上げたところで、言おうとした言葉は喉に詰まり出てこなかった。

ぽたっ、ぽたっ、と室内に雨が降る。
小雨な雨ではあるが、その雨は跡部の心を濡らすのに十分すぎる量だった。
「ふっ、・・・・・ふぇっ・・・・・」
仁王は泣いていた。嗚咽を漏らしながら、涙を
大量に流しながら、それでも跡部を真っ直ぐ見て。
跡部の頬に、心に、雨が落ちる。

「何で泣いてんだよ」
やっと紡ぎだした言葉はそのぐらいしか価値のない言葉で。
無力な自分に唇をかみしめる。
「・・・あとべぇ・・・・」
ふいに仁王の手が跡部の服の袖を掴んだ。
そして、涙声になりながらも跡部を呼ぶ。
「あとべぇ・・・・・あとっ・・べ・・・
ふっ、ぅぇ・・・・・」
跡部の袖を掴む手がかすかに震える。
「ん?」
跡部は優しく仁王に次の言葉を促した。
「ひっ・・・・ぅ・・ふぇっ・・・・き・・
ぐすっ・・きらい・・・にならない・・・でぇ
ふ、くぅ・・・っ」
ゆっくり、ゆっくり、震える唇で伝える仁王の
表情は、何もできない無力で幼気な子供そのものだった。
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