zoro story

□ep3
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「困ったよね……」


疲れきったその声は、賑やかな商店街の中に消えていった。


昨日と今日とで随分と疲れが溜まっている。ふと頭の中を過った麦藁帽子についつい溜息が漏れる。この疲れは全てあの麦藁のせいと言っても過言ではないだろう。


昨日出会ってからというもの、自分の何処を気に入ったのか、奴からの勧誘が絶えない。
今日も昼のストリートライブが終わるなり、奴は自分のところに来てずっと一緒にいた。歌っている間、大人しく聴いてくれたのは少し意外に思ったが、ありがたかった。


別に奴の事は嫌いではないし、海賊が怖いわけでもない。麦藁に関しては寧ろ好感を持っている。


今日も勧誘はしつこかったものの、彼が話す冒険談は聞いていて非常に面白かった。
思いのほか会話が弾みそろそろ引き上げないとなっと思い始めた頃、丁度良く通りかかった麦藁のクルーによって彼は回収されていった。

確か情報が確かであれば、航海士のナミと料理人のサンジだったはずだ。

ボコボコにされた顔が引き摺られていくのを見送り、ようやく一人になった俺は、急いで今夜の宿を探すことにした。


***

「今夜の宿と、それから早く次の島まで乗せてもらう船見つけないとな…」


そう呟いて大きめの荷物とギターを背負ったリンは言葉とは裏腹に、のんびりとした足取りで街中を歩いていた



運の悪いことに昨日あたりから海賊以外にもこの島を訪れる人は多く、数少ないこの島のホテルは何処も満室。


昨晩もなかなか見つからず、たまたま街中で再会した昼のお店の店長さんが泊まらせてくれた為、野宿せずに済んだのだ。まさに不幸中の幸いというやつである。


しかし流石に二日も連続で世話になるのもなんだか気が引けた俺は店長さんと奥さんに御礼を行って、今朝家を後にした。

少しは空室出てるだろうと思ってたけど…

「そう上手くいかないか。野宿かなこりゃ…」

今だに肩にかかる大荷物を持ち直して溜息を吐く。
ふと見上げた空には一番星が輝き始めていた


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