zoro story
□ep2
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引き寄せられるように近づいていくと聴こえてくるギターの音色と歌声。
ストリートライブだ。
二人がそのまま人の間をぬって中に進むと、そこにはギターを弾いて歌う1人の青年がいた。
帽子を深く被っていて顔は見えにくいが、少しはみ出た栗色の髪が日光に照らされて煌めいている
中性的で透けるような歌声に男女関係なく魅了されて、そこだけが別空間におかれた様な不思議な感覚だった。
ルフィ達も例外ではなく静かに彼の歌声に聴き入っていた
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どれほどの時間が経ったのだろうか。定刻のチャイムが街に響き渡った。チャペルのようなものではなく、少し軽めの鐘の音だ。
それは働く者達の午後の勤務開始の合図でもあるのか、客も散り散りになってゆく。
そんな客一人一人に青年は礼を言い、片付けの作業に取り掛かり始めた。
「とても良い声をしているのね」
かけられた女の声に青年は視線を向けると、ありがとうと微笑む。慣れたような自然な動作だった。
「見かけない顔ね。旅の人?」
「ええ、今日着いたばかりでして」
帽子のつばをあげて照れ臭そうに笑う青年。その顔にはまだ少しだけ幼さが残っている。
「この町はそうそう争い事起こらないからゆっくりしていって」
「へぇ、海軍支部が近いとか?」
「ううん。この島自体にはないんだけど…。ただこの島とは別の海軍支部がある大きな島ともう一つ別の島との丁度中間地点にあるのが此処なの。だから休憩がてらに海軍が度々立ち寄ることが多くて」
「海賊は下手に暴れられないわけだ」
「海賊が少ないわけではないんだけど、騒ぎを起こして困るのは海賊達だから。お陰で街も綺麗に保たれてるし、観光地としても有名なのよ」
「うん、僕も此処に着いた時は驚いたよ。本当綺麗だよね。気に入った。」
「ふふ、ありがとう。ゆっくりしていってね」
「ありがとう」
そこへ別の女性の声が響く。どうやらこちらに手を振っているあたりこの女性の友人らしい。
彼女は友人に返事をすると懐から紙幣を取り出して青年へ渡した。
「楽しい時間だったわ。受け取って?」
「こんなに?悪いよ」
「それだけの価値はあったわ。また明日も歌ってくれるのかしら?」
「うん。そのつもり」
「そう、よかった。明日は友達も連れてくるわね。ほら」
胸に押し付けられた紙幣を青年は渋々受け取る。それを少し見つめて申し訳なさそうに眉を下げた。
「明日は特等席を用意しておくよ」
彼女達の背中を見届けた後、青年はまた片付けに取り掛かるのだった。