novel

□試してみるか?
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「─…以上、今日の練習は終わりだ。皆早く帰って十分休むように。今日の鍵当番は…僕か」



インターハイでは順調に駒を進め、今年も優勝を勝ち取った洛山高校。


京都に戻ってからもすぐにウィンターカップに向けて練習を重ね、もうすぐ夏休みに入るというこの時期。


そろそろ合宿の予定を立てようと思っていた赤司は、自分が今日鍵当番で最後まで残ることになっていたので、誰かを待たせることもないと顧問のいる職員室へ向かった─。





















「──少し話が長くなってしまったな…」



顧問との話が長引いてしまい、早く帰らなければと足早に廊下を歩きながら窓を見ると、外は既に薄暗くなっていた。


練習着のままだったため赤司は部室に着くなりすぐに着替え始めた。


Yシャツを羽織り、ボタンに手をかけたところでふと動きを止める。



「…まだ帰ってなかったのか、─玲央」



部室の入口に視線を移すと、いつの間に立っていたのか実渕が静かにこちらを見つめていた。



「だって、征ちゃんみたいな可愛い子を一人で帰らせるわけにはいかないじゃない?」



口元をふっと緩ませながら小首をかしげる実渕に、赤司は呆れたように溜め息を吐く。



「僕の話を聞いていなかったのか?早く帰れと言っただろう」


「いいじゃなーい、別に」



そう言って中に入ってきた実渕はさりげなく電気を消した。



「おい、僕はまだ着替えている途中だぞ」


「知ってるわよ」



何か違和感を感じた赤司は、暗闇の中近付いてくる影を無言でじっと見つめ、目の前まで迫ってきたところでようやく口を開いた。



「…何がしたい?」



その問い掛けに、実渕はそっと赤司の耳元に唇を寄せて囁いた。



「これから分かるわよ」



その言葉が耳の奥に届いた瞬間─、視界が傾いたかと思うと、赤司はあっという間にベンチの上に組み敷かれていた。


実渕が自分に何をしようとしているのか気付いた赤司だったが、抵抗する気配もなく目の前にある顔をただ見つめるだけ。



「あら、抵抗しないのね」


「僕をそう簡単に自分のものにできるとでも思っているのか」



組み敷かれているというのにこの瞳の威圧感。


たまらないわね。


捩じ伏せたくなる─。



「ええ。…と、言いたいところだけど相手が征ちゃんだと正直分からないわ」


「……試してみるか?」


「え…」



赤司の手が頬に添えられただけなのに一瞬身がすくむ。


その一瞬の隙に呆気なく唇を奪われ、半開きになっていた口の中に生温いぬるっとした感触が入ってきた。



「っ…、征ちゃ…」



突然のことに驚き最初は困惑していた実渕だったが、そのうちそれに応えるように自分から舌を絡めていった。



「ん…っ、ふ」


「ぁ…─」



─長いキスをし終えてお互い息を整えていると、実渕が先に口を開いた。



「征ちゃんから誘ってくるなんて思わなかったわ」


「先手必勝だ」



くすくすと笑っている実渕に、ふっと妖しい笑みを浮かべる赤司。



「……征ちゃんをいただいちゃっても、いいのね?」


「僕を満足させることができるか?」


「当然」



いまだに余裕の表情を浮かべている赤司の首筋に、実渕は顔を埋めた─。





- end -
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