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□温もり
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※山獄21歳設定


俺が山本と別れてから3年。
あれから携帯を使う機会がめっきり減った。

高校時代、毎日のように、聞き慣れた着信音が鳴るのを待った。
どんな些細なメールや電話でも楽しかったし、
幸せだった。

メールの受信ボックスも、
着信履歴も、
すべて「山本武」で埋まっていた。


今では、10代目からの仕事のメールや着信で埋まっている。
次はいつまでに書類を完成させて欲しいとか、
仕事のためのスケジュール確認とか、そんなメール。



山本と別れてから携帯を買い替えて、
俺の携帯は番号もメールアドレスもがらりと変わった。
もちろん山本には教えていなくて。
だから、山本から俺の携帯にメールや着信がくるはずがないのに、
着信音が鳴り響く度に期待してしまう俺が居る。

完璧にアイツのことはふっ切ったはずなのに。

なのに、今でも俺の体に染み付いて離れない、

俺を呼ぶ声や、仕草、
土の臭い、汗の臭い、
優しく撫でてくれた分厚い手の平。
そしてなにより、

あいつの温もり。


あまりに温かくて。
愛しくて。

今でも思い出す。


本当は別れたくなんてなかったし、
今でもアイツが好きだ。

けど俺がマフィアの世界に入るってきめたとき、
同時にアイツとの別れを決心しなくてはならなかったんだ。
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