それは私が久々、夜に外へ出かけた時。
近くの公園でひとり、街灯の明かりを浴びながら歩いていた。
この時間帯は人がいないからと、油断して目を閉じて。
彼にぶつかったのは、目を閉じてから数秒だった。
『…った、』
「おや、」
ぶつかってもぶれない彼。
『ご、ごめんなさい…。』
「いえ、大丈夫です。」
どこか冷めた敬語で返事をする彼。
私は顔を上げ、目を見開いた。
それは、街灯の明かりだけでも分かった。
とても綺麗なオッドアイ、
さらさらと風になびく髪、
モデルのように整った顔。
心臓が射抜かれたような…そう、まるで恋だ。
恋…一目惚れだ。
「…何です、人の顔をじろじろと。」
『ぅあ…、あの!』
「…何です?」
『好きです!』
勢い任せにそう言うと、彼は目を見開いた。
その後すぐに怪訝な顔に変った。
「…病院に行かれてはどうですか。」
『専属の医師が居るので大丈夫です!』
「ほお、お金持ちなのですね。」
『はいっ、好きです!』
「そうですか。」
それだけ言って立ち去ろうとする彼。
せっかくの恋を易々見逃してたまるものか。
『あのっ!』
「……まだ何か。」
『10日だけ、10日だけ働きませんか?』
もう、この恋を止められない