それは、4日目の朝だった。
『骸、朝だよ。入るよ…?』
いつもより早く家に来た私は、骸が寝ている部屋をノックする。
返事がないから多分、寝ているんだろう。
別に開けるなとは言われていないし、少しだけ中を覗いた。
扉から見える位置にあるベッドには、見知った髪型に見知らぬ寝顔があった。
『む、』
骸とは違う、まるで少女のような顔を私は知らない。
あんな眼帯も知らない。
フリーズしていると、その眼帯少女が身じろぎをした。
音をたてないように、私はそっと扉を閉める。
「……人の寝姿を覗き見とは、いい度胸ですね心晴。」
扉の向こうから聞こえてきたのは、聞きなれた声。
『お、はよう…骸。』
「おはようございます。扉引きますよ。」
『えっ、』
言った瞬間扉を引かれ、背中から部屋の中へ入る。
少し頭打った。
『いたた……。』
「そこで、何をしていたんです。」
転げた私を上から覗きながら、問い詰めるように言う骸。
『朝だったので…起こそうと思って…。』
「思って?」
『……覗きました。』
「素直でよろしい。ほら起きてください、リビングへ行きましょう。」
何事も無かったかのように、リビングへと進む骸。
『あっ、骸っ。』
「…何です?」
振り向いた骸は、いつもの骸だった。
『……なんでもない。行こ。』
苦しかったけど、仕方ない。
いつもの笑顔で隣に並んだ。
結局骸は、あの少女について何も言ってくれなかった。
私が見た眼帯少女なんて、元から居なかったかのようだ。
きっと事情があるんだろうけど、私に教えたくないことなんだ。
そう思ってみたけれど、やっぱり心は苦しいままだった。
あの子は一体誰…?
契約なら、終わりの日まで私を愛して