『…っふ、……うぅ……。』
「…もういいでしょう。泣くのはやめてください。」
『ごめっ……ふぇ……っ、』
分からない。
僕は今契約としてとある少女の家で過ごしている。
10日限定で。
契約金もそこそこ良く、暇を持て余していたのでその条件を飲んだ。
でも、分からない。
出会ってすぐに告白。
そして契約。
僕の何が心晴をそこまでさせるのかが分からない。
「…泣き止みましたか。」
『…っあい。』
少し気の抜けた返事。
真っ赤に泣き腫らした目。
特に何も思わない。
「…で、今回はなぜ。」
『ネロと…パトラッシュが……うぅ…。』
「ああもう泣かないでください分かりませんが分かりましたので。」
その後泣きながら説明したことをまとめると、どうやらアニメを見て泣いていたらしい。
「そんなに感動するものだったのですね。」
『うん……もう、犬見れない…。』
「ちょっとよく分かりませんがまあいいでしょう。」
未だにぽろぽろと涙をこぼす心晴。
こういう時、彼氏とはどういう行動をするのですかね。
彼氏…そうですね。
1つ考えが浮かび、それをすぐさま行動へと移す。
少し身を乗り出し、隣に居た心晴と僕の唇を合わせる。
契約でも彼氏ですし。これで泣きやむなら安いものです。
その考えとは裏腹に、心晴はこぼれる涙を止めれない。
「…何なんですか。普通は泣きやむものでは?」
その声は届いていないようで、目を覆って泣いていた。
先刻よりも酷いような気もする。
「…嫌だったんですか?」
今度は聞こえたようで、頭を数回横に振った。
じゃあ何だ。なぜ泣いているのだ。
『なんでもっ、ない、から、』
片手はそのままに、もう片方の手で来るな、というポーズをとる心晴。
やはり、分かりません。
近付いてきたり、遠ざかったり…。
心晴のこころも、僕のこころも。
涙味の冷たいキスでいいから、したいと思ってしまった