Dropバス

□はじまり
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くそ…

一人で昼食をとり、映画を見て、暇を潰している時も、あの事が頭をぐるぐる回っている。

「はぁ…」


すっかり外は暗くなり、永島は自宅に向かう若干混んでいる電車に乗った。
「座れる訳無いか」
と、ドアの付近に立ち30分程度、ボーとしていた。


その時

「邪魔だよ、ババァ!!!」
と物凄い怒鳴り声が響いた。

優先席に座っていた若い男の足に、目の前に立っていたお婆さんの鞄が当たり、激怒してきたのだ。

「ふざけんなババァ、失せろカス」

車内の人たちは、彼を蔑んだ目で見ていたが、何もしない。
「はぁ…めんどくさい」
と永島は頭をかきながら、動き出した。

「おい、ここはお前みたいな奴が堂々と座って良い所じゃないんだぞ。ましてや、ご老人を」

「うるせぇんだよ、何説教してんの、キモッ」

虫の居所が悪かった永島は、その言葉に
「なんだその態度は!!!」とぶちギレた。

「そこ、どけ!!!優先席の意味も分からねぇのか、お前は!!!!」
永島は顔を赤くしながら怒鳴った。
すると、お婆さんは震えた声で
「ありがとう…でも良いの…本当にありがとう」
と宥めたが全く聞かず、永島は目の前の男しか見えていなかった。

「はぁ?何キレてんの?まじウケるんだけど」

「てめぇ…なめんなよ」
「ねぇ!!おばあちゃん」

突然、子供の声がし、一同言い争いを止め、向かいの席を見た。
そこには、フードを被った小学5、6年の少年が座っていた。

呼ばれたお婆さんは
「なに?」
と尋ねたら、
「こっちこっち」
と手招きをし、今まで自分が座っていた席に座らせた。
そして、少年は向きを変え
「お兄ちゃん、可哀想だね」
と男を指差しながら言った。
それに男は怒り
「何だと!!!ガキ!!!!」
と立ち上がった。

「おい、まだ話は終わってない!!!」
永島は男の相手を自分に戻そうと彼の肩に手をかけた。

その瞬間、
永島は、突然強烈な眠気に襲われた。

「あ…あれ…なんだ…こ…れ…」
と言いながら、元々男が座っていた席に崩れ座り、そのまま意識が消えた。

「邪魔だよ…刑事さん」
少年は、微かに発言した。その時
「おいガキ!!!自分の過ちを分からせてやるから、電車降りろ、コラ」
と胸ぐらを掴み、ドアに叩き付けた。
周りは見てみぬふり…

その周りの様子を見た後、少年は男の方に顔を向け、
「良いよ、じゃあ次の駅で降りようよ」

とハキハキした様子で言った。
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