6億分の1の奇跡。

□03 麒麟 と、300年後の世界
1ページ/2ページ

※セツナ過去捏造注意。



しばらく後。
イミナは、ゆっくりと体を起こした。

――目が覚めたか、イミナ。――
「ええ、おかげさまで。」
纏う雰囲気が、一刻前のものとは明らかに違う。
イミナは――魂の記憶を取り戻していた。

「しっかし、驚き。この私が、18歳の誕生日を迎えられるなんて。思っても見なかった。これも、貴方のお陰という事?」
――そうだ。あの時、我が汝を護った。――
「そう。あの時の光はそういう訳か。で、いくつか質問があるのだけど、いい?」
――よかろう。――
「まず、貴方は何? 見たところクリスタルみたいだけど、クリスタルはアレシアの創った朱雀、蒼竜、白虎、玄武しかないはずでしょう。黄色の貴方は?」
――我は……上位の世界より生み出されし者。そこの者達の想いの結晶とでもいったところか。――
「……良くわからない点が多々あるんだけど。上位世界と言うと、アレシアが開こうとしている不可視世界とやら?」
――そこより上位の世界だ。否、別の次元ともいえる。が……詳しい事は我にも判らぬ。我はそこの想いの強さにより生み出された、所詮この世界にとどまる物質。我の知りえる事と言えば、この世界に関するもの位だ。――
「……うーん……とりあえず、今までの輪廻の中ではいなかった……よね? 何故今、現れたの」
――さて、な。我には判らぬ。強いて言うならば……観測されたから、か。――
「観測された?」
――さよう。この筋書きを開き、観測した者がいる。……観測者なき物語は存在し得ないからな。――
「……頭が痛い。もう、貴方は突然現れた謎のクリスタルってことでいい。考えると頭がこんがらがりそう。」
――いずれ判る。――
「適当なことを……ああ、そうだ。貴方は、朱雀、みたいに名前はあるの?」
――名、か。南を守護するが朱雀、西を守護するが白虎、東を守護するが蒼龍、北を守護するが玄武であるならば……われは、中央を守護する麒麟であろう。――
「そう。なら、麒麟」
表情を、すっと、真剣なものにさせる。
「私の記憶。完全じゃない……でしょう?」
魂の記憶。死して魂だけとなった私は、毎回毎回オリエンス世界の行く末、終焉を視ていた。……はずなのだが。
どういうわけか、0組が歴史の表舞台に立ってからの経緯が思い出せない。
でも。そのことに想いを馳せると、言いようのない焦燥感が胸に沸き起こる。
……なんだろう、これは。
――確かに其の通り。我は、汝の記憶を意図的に操作した。――
「何故。理由は?」
――我が汝に望むものの為だ。――
「一体、私に何を望んでいると?」

――汝には……薇【ぜんまい】になってほしい。世界の最後の歯車を回す、薇に。――
「……ゼンマイ? どういうこと?」
――具体的にいえば、だ。0組と共に、生き抜いてほしい。――

 ……。なんですと?

「はぁ!? それまで、どう生きろっていうの? 今は鴎暦元年でしょう!?」
――我は汝に頼みたい。
麒麟はそこで、一拍の間を置いた。
――我の……この麒麟のルシとなり、数百の時を経て、0組と共に、生き抜いてほしい。……我が汝に望むのは、それだけだ。――

「どういう、こと――?」
――汝は、輪廻するこの世界を変えたいと思っていたのではなかったか?――

私には……記憶が曖昧だから良くわからない。
けど。
この言いようのない焦燥感。この気持ちは嘘じゃない。
……それに、0組。彼らはアレシアが手塩にかけている者たちだ。
そして、世界の行く末に関する重要な要素だったはず。
彼らと共に生きるのも……悪くないと思えた。
なら。

「――判った。麒麟の、ルシになる。そして……歯車を回す、薇となる。」
――よき返事だ。感謝をしよう。――
次の、瞬間。
カッ、と、白い光が目を灼いた。
黄金の魔方陣がいくつも浮かび上がり、私を包み込む。
そして。

全てが収まったとき、私は思わず膝を付いていた。
……両手の甲に現れているのは……金色のルシの紋章。

――大丈夫か?――
「ええ……大丈夫。ち、ちょっと体が重いけど……」
――我は、他のクリスタルとは成り立ちが異なる……ルシの力に、体が付いていかないのであろう。しばらく休め。――

そうさせてもらおう。

私は崩れるように横になり、そのまま眠りへと落ちていった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ