あの日が嘘でないことを……

□『初島編』
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九鬼島での思いがけない片倉くんの内心の吐露……。
ギクシャクとしたまま別れ、政史はずっしりとした重石をのせられたように沈んでいた。

しかし、翌日の定期連絡で片倉くんになかったことにしないでほしいと言われ、付き合うことになっただけでも飛び上がるくらい嬉しかったのに、5日後の登校日のあとに一緒に寄り道しないかという誘いまでもらい、政史は舞い上がったのだった。



利久は政史に対する自分の気持ちにようやく気がつき、政史と付き合うことになった。
その翌日、利久はドキドキしつつ託生からの電話に出た。

「あ……、利久?」

「託生……あ、のさ……」

しばらく待っても返事のない利久にしびれを切らせたのか託生に急かされた。

「……利久?何かぼくに言いたいことがあるんだろ……?」

託生の言葉に意を決した利久は、勢いよく話し出した。

「託生、俺さ……、岩下と付き合うことになった。」

託生は利久の真っ赤になっているだろう顔を想像し、クスリと微笑んだ。

「おめでとう、利久。」

「あ、ありがとう……?」

「フフッ……そこ、なんで疑問系なんだよ……?」

託生はくすくすと笑いながら利久に突っ込みを入れた。

「いや……なんでだろ……?」

しどろもどろに答える利久に託生もそれ以上は責めず、利久と話し出した。

「それで?」

「え……?ああ……今度の登校日、帰りに寄り道する約束したんだけどさ……、託生どっか食事できるとこ知らないか……?」

「んー……。それなら、リバーサイドテラスってお店がいいよ……祠堂の学生はほとんど来ない穴場なんだよ、ギイの受け売りだけどね……」

「そっか……ありがとな、託生」

「どういたしまして。岩下くんとの初デート楽しんでおいでね……」

そう言うと託生は利久との通話を切った。


嬉しげな笑みを浮かべる託生を見やったギイは一瞬、憮然とした表情を見せると託生のそばに歩み寄った。

「あ……っ」

いつの間にかシャワーから出てきていたギイにギュッと抱き締められる。ギイの纏うコロンの甘い花の香りに包まれ、ドキッとした瞬間、横から手を伸ばされ、携帯を取り上げられた。

「オレといる時に何やってんだよ託生……」

「え……?ちょっ……ギイ……っ!?」
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