タクミくん(long story)

□近いようで遠い……(ギイ×託生)
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『sideギイ』

「ねぇ、ギイ?」
ソファに座り、休日の午後をのんびりと過ごしていた時だった。
ふいに託生に話しかけられたオレは雑誌に目を落としたまま、返事を返した。
「ん……?」
「今日、ギイの誕生日じゃない?」

――そういえば、そうだった。
すっかり忘れていた……。
託生の誕生日なら何があっても忘れない自信があるがこと自分のはつい――

「あぁ……そういえばそうだな……」
さして興味を魅かれることもなく生返事をした。
直後、オレの完全想定外の託生のセリフに唖然となるとも知らずに……。



「プレゼント何も用意してないんだ……。だからね……ぼくをあげるよ……」
「そうか……って、なんだってっ!?」
託生の口から飛び出したとんでもないセリフに、思わず手にしていた雑誌を取り落とし、唖然とする。
まさにハトが豆鉄砲をくらったというべき表情だったろう……
「だから……プレゼントにぼくをあげるって言ってるんだ……」
二の句が継げず、託生を見つめたまま固まっていたオレに畳み掛けるように告げる託生……。

「……っ!……いや、託生?おまえ自分が何言ってるかわかってんのか?もしかして酔ってる……わけ、ないよな……?」
オレはテーブルを見遣り、コーヒーカップしか載ってないのを確認する。
「あたりまえじゃないか……っ!ぼく、コーヒーしか飲んでないんだから……。しかもこのコーヒー淹れてくれたのギイだし。……それとも何か入れたの……?」
「ンなわけあるか……っ!」
「じゃあ、酔ってないってことだよね?」
オレの焦ったような言葉に託生は自分だけで納得したようにうなずき、オレにぴったりと寄り添った……。
「ちょっ……っ、た、託生!?」
託生はニッコリ微笑むとオレを見つめたまま返事をする。
「なぁに、ギイ……?」
その表情にオレは息を飲む。
「くっそ……っ!オレを挑発しやがって……っ!どうなっても知らないぞ……っ!イヤだ、やめても聞かないからな……っ!」
「うん、いいよ……」
託生は目を閉じ、オレに身体を預けた……。










――そんな夢をみた。
オレはハァっと大きく息を吐くと、髪を掻き上げ俯いた……。
どれだけ、欲求不満なんだか……
当たり前か……もう2週間以上も触れてないんだ……
託生に逢いたい……
抱き締めたい……
あの口唇にキスしたい……
「抱きたい……託生……」
オレはベッドに座り、足元を見下ろすとポツリとつぶやいた……
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