タクミくん(short story)

□ベッドの中での睦言お題(セリフ)
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『ちょ、噛みつかないで……』


今日は土曜日。
ぼくは週明けに提出しなければならない古文の課題が終わらず、教科書とノートを前に悪戦苦闘していた。

ギイはというと、最初は大人しく自分のベッドで雑誌を捲っていたのだけれど、そのうち飽きてきたのか僕の近くに椅子を持ってきて、机に頬杖ついてジッと見つめてくる。
「ギイ……?気が散るから向こうに行っててくれない?」
目が合い、赤面しそうになったのを隠そうと些かつっけんどんに、ギイに頼んだ。
「邪魔してないだろ?大人しくしてるじゃんか……」
「そうだけど……ジッと見られてるのもイヤなんだよ……」
ぼくは手を止め、ギイを見る。
「じゃ、早く終わらせろよ……オレ、シャワー浴びてくるから……」
頬が心なしか赤くなっていたのだろう、クスリと笑ったギイは手をひらりと振ると浴室へと消えた。
「はぁ……ギイってば……」
ぼくは気を取り直すと、また課題に取り組み始めた。

しばらく集中していたからか課題はすべて済み、あとは片付けるだけになった時、背後からギイがぼくに被さり、首筋に唇をすり寄せる。

「託生……」
「ギイ……あと片付けたらおしまいだから待ってよ……」
「待てない……」
ギイはぼくの耳に息を吹きかけ耳朶にカプリと噛みついた。
「ちょ、ギイ……っ噛みつかないで……っ!」
「託生……愛してる」
弱い耳元で吐息と共に囁きを落とされ、力の抜けたぼくはそのままベッドへと運ばれたのだった。
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