タクミくん(short story)

□Halloween(ギイ×託生)
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「Trick or Treat!」
「……びっくりした……何ギイ?」

夕食後、305号室に戻り、課題をやっつけていたぼくの前にいつの間にやら戻ってきていたギイがぼくに向けて手のひらを差し出す。

「……何って、託生。今日はハロウィンだろ。だ・か・ら、Trick or Treat !」

ギイは満面の笑みを浮かべ、再度手を差し出す。

「……ハロウィンってあのカボチャのお化けとかのやつだよね?それが何?とりっく……?」

ギイのネイティブな発音にぼくはすべてを聞き取れず、一部を繰り返した。

「なんだ、託生知らないのか?Trick or Treat」

ギイはぼくにも聞き取れるようにゆっくりともう一度繰り返した。

「……お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ、って意味なんだよ。託生、オレにお菓子くれ……」
「……そんなこと急に言われても、お菓子なんてあるわけないじゃないか……」
「……そっか、託生お菓子くれないんだな……」
「……っ!」

嬉々とした表情でそう言ったギイにぼくはなんだか嫌な予感しかしない。

「……だったら……♡」

ギイの意味ありげな言葉にぼくはびくりと肩を震わせた。

「……や、ギイ……ほら、ぼくまだ課題が……」

焦りを滲ませて机の上のテキストを指差す。

「……大丈夫だって。オレがあとで懇切丁寧に教えてやるよ……」
「……いや、でも……」

顔をひきつらせつつ振り返るとにっこりとするギイと目があった。

ギイの端正な顔が近づいてくる。
反射的に目を閉じると、口唇をそっと塞がれた。
上唇、下唇と啄むようにキスされた。
徐々に口付けが深くなる。
舌が入り込んできて、口内を動き回る。

溢れ出した唾液をコクリと飲み込むと口唇を離された。

「……あ、ふ……っ」

こらえきれず吐息がこぼれ落ちる。

「……託生、おいで……」

ぼくはギイの声に逆らえず、腕を伸ばした。

結局、そのままギイのベッドで最初の言葉通り悪戯されて甘い夜を過ごすことになったのだった……。



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