タクミくん(short story)

□ひめはじめ(ギイ×託生)
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今年も残すところ数分……
テレビでは街の中心部であるワールドタイムズスクエアが映し出され、カウントダウンを始めた。
オレはリビングのソファに座り、キッチンに立っている託生に声を掛けた。

「託生、そろそろだぞー」
「うん、ちょっと待って。いま行くから……」

そう答えてすぐ、カナッペの皿とグラスを手に託生が戻ってきた。

「お待たせ……」
「あぁ、サンキューな……」

託生からグラスを受け取って礼を言い、テレビに目を戻すとちょうど一分前だった。

「ほら託生……」
「うん……」
「「5・4・3・2・1 Happy new year!」」

二人声をそろえてカウントし、グラスを合わせた。

「託生、今年もよろしくな……」
「こちらこそ……」

そう言ってキスを交わし、笑みを浮かべた。


グラスを傾けながら、託生が用意してくれたツマミを片手に語り合う。
ボトルの中身が半分ほどに減ったころ、オレは託生に警戒心を抱かせないようごく普通に問いかけた。

「……そう言えば知ってるか……?託生……」
「……なにを?」
「日本じゃ、干支があるだろ?」
「うん……確か今年は巳年、だったよね?」

オレは託生の言葉に頷いてやる。

「あぁ……そうだ。蛇だな。あれってな、動物のなかでも一番タフなんだとさ……」
「へぇ……」

いまいち、ピンときてない託生にかいつまんで説明してやった。

「……蛇ってやつはな、スタミナがあるから交尾の時期になると一日中でも絡み合ってるんだと……」

口角を上げ、そう告げると

「へ、へぇ……そうなんだ……」

オレの表情に何かしら感じたらしく、そう言いながら託生はオレから離れようと後退りする。
それを簡単に許すオレじゃないことはわかっているだろうに……
オレは託生が動いた分、近寄ってやる。

「……っ!あの、ギイ?ぼく、そろそろ眠くなってきた……かな……?」
「……そうだよな、そろそろ休もうか……」

オレが素直に身体を引いたのに、ホッとしたように託生が身体から力を抜いたのを見計らい、その身体を押し倒した。

「……ちょっ、ギイ……っ!」
「……オレがそんなに聞き分けがいいハズないことは託生が一番よく解ってるだろ……?」

目を見つめ、囁くように言うと託生がコクリと息を呑みこむ。
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