タクミくん(short story)
□surprise(ギイ×託生)
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放課後、雑用を片付けたオレは託生がいるだろう温室へと向かった。
近付いていくと、耳に心地よい旋律が聞こえてくる。
「託生、頑張ってるみたいだな……」
託生が奏でるヴァイオリンの音色はすっと心に沁みわたり、なんとかしてオレと接点を持とうとまとわりついてくる一年生たちのせいで凝り固まった肩から力が抜け、心が洗われる。
そっと温室の外側から覗き込み、託生の姿を確認し、演奏が終わるのを見計らってオレが扉を開けるとかすかにドアの軋む音がし、託生が振り返った。
「ギイ……っ!」
約束をしていたわけではなかったから、オレの姿を認めた託生は大きく目を見開き、駆け寄ってくる。
「託生……」
託生を腕の中に迎え入れ、ギュッと抱き締めると託生もオレの背に腕を回し、抱き締め返してくれた。
「……ギイ、でもなんで?今日約束してなかったよね?」
「約束してなきゃ来ちゃいけないのか?」
そう言ったオレに
「ちが……っ、そうじゃなくてギイ忙しいのに……」
言いかけた託生の台詞を遮るようにキスをした。
「……っ……ぼくも会いたかった……っ」
ギュッと抱きついてくる託生を押し倒したくなるのを理性で押しとどめ、身体を離した。
「……託生、今日は何日だ……?」
「え?18日……。あ……っ」
思った通り、自分の誕生日をすっかり忘れていたらしい託生を苦笑しつつみつめた。
「誕生日おめでとう、託生……」
オレはポケットから取り出したものを託生の首からかけた。
「ギイ、これ……」
シルバーに輝くリングに通した細身のチェーンがシャラッと胸元に揺れた。
「あぁ、プレゼント。ほんとならここにつけたいとこだけどな……」
オレは託生の手をとり薬指に口付けた。
「……ギイ……」
「さすがに無理だからな……」
口付けた指をそのまま握りしめ、口にした。
「……ありがとう、ギイ……」
託生はリングを手にとると、はにかみながらオレを見つめ、頬を染める。
そんな可愛い仕草をされた上、ここ数日は遠目から姿を見るだけで、こうして触れ合うのが久しぶりなこともあり、オレは堪えきれずグイッと託生の肩を引き寄せ、頤に手を掛けると口唇を重ねる。
「ん……っ」
触れるだけの口付けで済ませるつもりが託生の甘さを含んだ声を耳にした途端、理性という名の箍が外れた。
次第に口付けが深くなる。舌先で口唇をノックして小さくひらいた隙間から舌を挿し入れた。
歯列をなぞって口内を弄ると託生もそれに応えるように舌を絡めてくる。
お互いが足りなくて貪るように口唇を重ね合う。唾液を交換し、飲み込むと口唇を解いた。
「ぁ……っはぁ……っ、あっ……んっ」
口唇を耳朶に滑らせ甘噛みしたあと、吐息を吹き込むと託生は身を震わせて喘ぎを漏らせた。
手のひらをシャツの裾から忍ばせ、滑らかな肌を辿る。
敷地の広い祠堂の一番奥に位置する温室、そろそろ夕食の時間になろうかという時間にここに足を運ぶものもいないだろうと、行為がエスカレートしていく。
撫でさする手のひらに引っかかった突起を摘み、押しつぶすように刺激し、シャツをたくし上げると口唇を寄せた。
口唇と指先で愛撫しつつ、片手で託生のベルトをはずし、下着越しに触れると熱を感じる。ウエストから手のひらを潜らせ、直に握り込んで上下させた。
「あぁ……っ!だ、駄目……誰かに見られたりしたら……っ」
喘ぎを堪えられずにいるくせにそんなことを言ってオレを押しやろうとする。
「……こんな時間だぜ、誰も来ないさ。それに託生、これ我慢できるか?」
敏感な先端を指先で刺激する。
「ゃあ……っ!で、でも……っ」
「……オレもこんなだぜ……早く託生が欲しくて……」
託生の太ももに自分の腰を押し付け、昇ぶったものを擦り付けた。
「……っ!」
ビクンと身体を震わせ、オレを押しやろうとしていた腕から力が抜ける。
耳朶から首筋へと口唇を滑らせ、そこかしこに口づけてゆく。そうしながらも託生自身を刺激する手は止めず、緩やかに撫でさする。
「ん……っ、ふ……ぅ……っ」
喉元を仰け反らせ喘ぎを堪えるその姿に煽られ、託生のズボンを下着ごと取り去るとオレの脚の上に抱き上げた。
託生の雫を纏わせた手のひらを後ろに滑らせ、指を沈ませると敏感な箇所を指先で擦り上げる。徐々に柔らかく解ける蕾を指をもう一本増やし、掻き回した。
「ぁ……っふ……」
託生はオレの肩にしがみつくようにして零れ落ちる声を堪える。
急くようにベルトを外し、寛げると頃合を見計らって指を抜きとり、託生の腰を少し持ち上げ、突き入れた。
「ゃああ……っん、ふっ、ぅ!」
口唇から零れた嬌声をキスで塞ぐ。託生の腰を摑むと小刻みになかを突きあげた。
「んっ、んん……っ」
円を描くように前後に腰を揺らし、敏感な箇所を突くと託生は背筋を仰け反らせる。
口唇を解くと、一際奥を突きあげた。
「ふ、あっ、ギっ、も……っ、あ、あぁ……っ!」
その瞬間、託生は甲高い声を上げて達し、内部をギュッと締め付け、オレも後を追うように託生の最奥に迸らせた。
達して脱力した託生がオレにもたれかかるように胸が合わさると、お互いの鼓動が早鐘を打っているのがわかる。
このまま抱き合っていたいのはやまやまだがそう言う訳にもいかず、身体を離すと手早く身だしなみを整えた。