あの日が嘘でないことを……

□『初島編』
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託生の手から取り上げた携帯を傍らにあるソファに放り投げて覆い被さり、抗議の声をキスで塞いだギイは無防備な首筋に唇を落とし、舌を這わせながらパジャマのボタンをはずしてゆく。

「……っ!……や、ギイ……っ!」
託生の弱いところなど知り尽くしているギイは首筋から徐々に唇をずらすと鎖骨のラインに沿って
甘噛みとキスを繰り返し、所有のしるしを刻む。

「……ふっ……ぁ……っ!くぅ……ん……」

託生は自分の声が漏れるのを気にして咄嗟に唇を噛み締めた。

「託生……ほら、噛むんじゃない……傷になるだろうが……」

イヤイヤと頭を左右に打ち振るう。するとサラサラの黒髪がシーツに当たりパサパサと音をたてた。
「託生……?」

ギイに呼ばれ、涙に潤う瞳をうっすらとあけた託生はブラウンの瞳に覗き込まれ頬に朱を掃いた。

「……オレにもっと聞かせてくれよ……オレは託生の声が聞きたい……」

「……そっ……んな……の、無、理っ……だ……よ……っ!」


透けるような白い肌を羞恥にそめながら、託生は途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

ギイは恥ずかしげに目を閉じた託生の瞼にキスを落とす。
もう幾度も愛しあい、深く結ばれているのにいつまでも初々しい反応を返す託生が可愛く愛おしい。
フッと微笑んだギイは託生の唇に啄むようにキスを繰り返す。
口付けを繰り返すうちに薄くひらいた隙間に舌を差し入れ、歯列を辿ると頬裏を擽るように舐めた。そして奥に隠れていた託生の舌を絡め捕り吸い上げる。
角度を変えては合わせ、溢れる唾液を交換し、飲み込み切れずに流れ落ちたものを舐めとった。

「……んんっ……はぁ……っ」

託生は濃厚なキスに吐息までも持って行かれ、大きく息を吐いた。
託生の滑らかな肌に手のひらを滑らせ、脇腹から胸元を往復させる。時折胸の尖りに触れそうで触れない微妙な位置を狙って愛撫する。

「……ぁ……っ、ギ……っ!」

ギイはそのままそろそろと手のひらを移動させ、腹部から脚に向かい撫で下ろしてゆく。
もちろん、中心には触れない。
脚のつま先まで行くと、今度は唇でキスを落としつつ、上に向かい撫で上げる。

皮膚の薄い太ももの内側をなぞり、きつく口付けると朱い花びらが咲く。

託生の中心は、勃ち上がったまま震えている。
ギイは身体を起こすと託生の顔を覗き込み尋ねた。

「託生……?なぁ……どうして欲しい……?」

託生は両腕で顔を覆ったまま、身を捩らせた。

「託生……言わないならこのまま……だぞ?」

託生は腕をどかすと、ギイを睨みつける。
託生は睨んでいるつもりなのだろうがそんな潤んだ瞳で見つめられても誘われているようにしか見えずクラリとする。
思わず、理性が飛びそうになるのを必死に押し止めると、託生の耳元に唇を寄せ、熱く囁いた。

「託生……?オレが欲しい……?」

ギイの囁きに託生はびくんっと身体を弾かせる。

肝心な所には一切触れてもらえず焦らされ続け、仕上げとばかりに耳元にそんな囁きを落とされ、羞恥よりも欲望が勝ったのか小さな声が託生の唇から零れる。

「……ギ……イ……っ!お、ねが……い……っ!」

託生の目尻からポロリと涙が一筋流れ落ちた。

「託生!ごめん!泣かせるつもりじゃなかったんだ……!いつもオレが託生を欲しがるばかりで託生はオレに押し切られてるだろ……?託生に求められたかったんだ……!」

ギイは託生を抱き締める。

「……っ!ギイ、のばか……っ!ぼ、くだって、ギイ……が欲、しい……っ!だけど……っ!」

託生は言葉に詰まり、ギイの首に腕を回すとすがりついた。

「託生……っ、託生……っ!」

ギイは託生の名を呼ぶと深く口付ける。唇を合わせ、舌を差し込んで口内を舐めた。首に絡んだ託生の腕にギュッと力が入り引き寄せられた形になり更にキスが深くなる。託生もギイに応えるように舌を絡め合わせた。

「は……ふぅっ……」

唇を離すと託生は大きく息を吐いた。

ギイが頬を伝い落ちた涙を舌で舐めとると託生は目を開けた。
その瞳は熱に潤み、ゆらゆらと揺れている。

「愛してる……託生……」
「ぼくも、好きだよ……」

二人はどちらからともなくキスをした。
ギイは唇を耳朶へ滑らせ、キスを落としながら少しずつ移動させてゆく。
ツンと尖った胸の飾りを唇で挟みチュッと吸い付き、同時にもう片方も指先で摘んで押し潰す。

そして、前触れもなく託生自身に唇を寄せると口に含み、舌で愛撫を施す。
「……あぁ……っ……」

突然与えられた甘美な刺激に為すすべもなく喘ぎがこぼれ落ちる。
「あ……、ギイ……っだ、め……っ……やあぁ……っ!」

待ち望んでいただけに、あっという間に昇りつめてしまう。
託生が放ったものをコクリと音をたてて飲み込んだギイは奥まった場所に指先を伸ばすとそっと忍ばせた。

差し入れた指で良いところを弄ると託生は声を我慢しきれず喘ぐ。
慣れてきたのを見計らい、指を引き抜くと、託生の脚の間に身体を割り込ませ、横に手を突き託生の顔を覗き込んだ。

「託生……いいか?」

託生が微かに首肯したのをみるとギイは自分自身をあてがい、腰を進めた。

「……ぁ……あぁ……っ!」

熱塊が狭隘な部分を押し開き、入り込む。そのまま奥まで一息に貫かれたかと思うとすぐさま寸前まで抜き去られ、また奥まで……。
「あぁっ……ぁん……っ……あ、ギ、イ……っ、あぁ……っ!」

託生の上気した頬、動きについていこうとしがみつく腕、そして唇から漏れる喘ぎにギイも煽られ、昇まってゆく。

二人のあいだに挟まれた託生自身はすでに限界まで張り詰め、いつ達してもおかしくなかった。

「……っあ、ギ……ィ……やっ……もっ、だめ……っ……」

「た、くみ……おまえの中、気持ち良過ぎ……っ、オ、レも……そろそろ……っ!」

ギイは託生の腰を鷲掴み、動きを早めた。

「……ふっ……ぅ……っ!……あああぁ……っ!」

「……うっ……!」

託生が達したのとほぼ同時に動きを止めたギイは最奥に欲望をぶつけ、大きく息を吐いた。
荒い呼吸に胸を上下させ、託生も息を吐いたが、一向に離れようとしないギイに焦れ、胸に手をやり押し返そうとする。

「ね……ギイ、離れてよ……」

「イヤだ……」

言い様、まだ挿入ったまま腰を揺すり上げる。

「……っ……!あぁ……っ……や……ダ、メ……っ!」

そんな託生をキスで黙らせ、動きを再開した。



もう何度目ともわからない放埒を迎え、二人でシーツの上に倒れ込む。

ギシリとベッドのスプリングを鳴らし、ギイは託生の上から起き上がる。身体を伸び上がらせて託生の唇にしっとりとくちづけた。
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