あの日が嘘でないことを……

□『仙台編』
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二人で話し合った結果、入寮日に合わせるように日程を組んだ。


当日。

夏休みも終わりに近いのに、仙台駅は混み合っていた。

新幹線からホームに降り立ち、改札口に向かった政史は改札の向こう側に利久の姿を見つけ、微笑んだ。

「来てくれてありがとな……」

利久の言葉に頬を染めて頷く。

さりげなく政史の荷物を持ち上げた利久は、アーケード街に向かい歩き出す。


「先に昼飯済ませるか?」

「そうだね……」


利久に連れられて向かった先は、仙台名物の牛タンが食べられるお店だった。






「美味しかったね……」

「だろ……?」

そんなことを話しつつ、アーケード街を散策した。

「あ、そうだ。俺んち昨日から誰もいないんだよな。たいしたもてなしができなくて悪いな……」

「そんなこと気にしないで。ご両親どちらかへお出かけなの?」

「いや、町内の福引でさ、旅行券があたったんだよ……」

「お姉さんは……?」

「姉貴?親父たちがいないのをいいことに彼氏んちに入り浸ってる」

「そうなんだ……」


「あ、悪い……姉貴に頼まれてたやつ返さなきゃいけないの忘れてた……っ!」

レンタルショップに入った二人は新作の入荷案内に目をとめる。

「あ……俺、これ観たかったんだよね」

「へぇ、岩下こういう系の映画が好きなんだ?」

それは吸血鬼が主人公のラブロマンスでノベライズ化もされており、最近若い女の子たちに人気の作品だった。

「ジャンルじゃなくて出てる俳優が好きなんだ」

「じゃあ一緒に観よっか……」

新作コーナーに向かう。
目的のDVDを見つけ、手を伸ばすと二人の指先が触れ合い、手を引いた。

「あ……俺これ借りてくるわ……」

利久はレジへむかった。


「おまたせ、行こうか」

政史を促し自宅へむかった。
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