リクエスト小説
□オオカミと1匹(ひとひき)の仔犬
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昔昔のそのまた昔の昔…
人里離れた森の奥にオオカミの剣狼くんが住んでいました。
彼はオオカミだというだけで人から恐れられ嫌われていました。
ホントはとても優しく真面目なことは、誰一人として知りません。
(今日も日が暮れるのが早いな…)
剣狼くんは森に生っていたリンゴを収穫して、暗くなる前にお家へと向かっていました。
クゥ…ン、クゥン…
(……?)
するとどこからか小さな鳴き声が聞こえてくるではありませんか。
(どこから…?)
剣狼くんは気になり、声のする方へ歩いて行きます。
5分後…
(確かこの辺り…)
声が泣き止み、感覚だけを頼りに探す剣狼くん。
茂みを掻き分け覗き込むと、なんとそこには、布に包まれた赤子がいるではありませんか。
「捨て子だ、誰がこんなことを…」
剣狼くんはリンゴの入った籠を地面に置くと、赤子を両手で優しく拾い上げます。
焦げ茶色の毛並みに覆われた犬獣人の男の子。彼は泣き疲れたのか、すやすやと寝息を立てています。
(とにかく家に連れて帰ろう)
剣狼くんは赤子を抱いたまま籠を持つと、お家へと向かいました。