短編集
□獣人オークション
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ここは一部のマニアだけが知っている会場。
1階は昼夜問わず開いている居酒屋。タバコの臭いと酒の臭さが充満している。
そしてその下、地下1階にある。こちらは夜間の数時間しか経営されていない。
しかし1階の居酒屋よりも遥かに儲かっている。
それはなぜか―
司「さぁ〜みなさん。今日もお集まりくださって、ありがとうございま〜す!」
ステージの上でカジュアルな服装をした司会者らしき人物が、マイクを片手に挨拶をする。
顔はサングラスをして、頭には長いハット帽を深く被り、まるで素顔を隠しているようだ。
『よっ、待ってました〜♪』
司会者の登場に観客席から声が上がる。
司「みなさまのご愛顧もあり、本日も無事始められましたこと、心より感謝申し上げます」
司会者は軽やかにステップを踏みながら、ステージを1周する。
司「さてさて、挨拶はこれぐらいにして、本日の『商品』をご紹介致しましょう」
それから定位置に戻ると、『商品』を強調して言い、手を上げる。
すると会場の明かりが消え、司会者の背後のカーテンに明かりが集中する。
と思った瞬間、そのカーテンに3つのシルエットが浮かんだ。
『おお〜!』
観客が歓喜の声を上げる。
司「本日の商品は、左から、『むっちりな猪獣人』『ぽっちゃりな竜人』『でぶな虎獣人』の3つでございます」
司会者はざわめく観客に飲まれることなく、冷静な口調で紹介する。
司「しかもこの3つの商品、入荷仕立てという新商品。本日来られたお客様はなんと運の良い方々でしょうか」
『うぉぉぉぉっ!!』
司会者の言葉に、さらに興奮を高める観客たち。
それを見て司会者は、ニヤリと気付かれないように笑った。