ポケモン
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そもそも、その瞬間でさえも曖昧だった。
ただ強い衝撃と激痛、そして見えたのは赤くなった自分の手。
気づいた時には何もない空間で。
異常なくらい思考が澄みきっていて、自分は死んだんだなと悟った。
そこで出会ったのが黒い翼を持つギラティナだった。
ポケモンはそこまで知らなかったし……でも、たしかピカチュウは可愛かったなと思い出した。
「えぇと……カッコイイ翼ですね」
「……ほう。珍しく綺麗な御魂だと思って拾ってみたが……面白いことを言う」
すぅっと赤い目を細めてギラティナは顔を近づけてきた。
しかし既に死んだ身なので然程恐怖心もなく大きな目を見つめた。
「それに……特殊な人間だな。おいそれと死なせて輪廻に還すのは惜しい」
「輪廻……?」
「生きとし生きるもの、全て死んだ後は輪廻の輪に還る。そして次なる転生をうけ……また生を受けるのだ」
だが、とギラティナは言葉を続けた。
「輪廻の輪に一度還れば最後、いづれの時、空間に生れ落ちるか分からぬ。故に手放すのは勿体ないゆえ……我が作りし空間に連れてまいった」
「な、なるほど…つまり、えぇとっ」
「……分かっておらんな」
「すみません…浅知恵なもので……」
ギラティナはふよふよと翼を動かしながら死んだ私に慈愛の目を向けた。
「簡潔に言おう。お前が気に入った」
「まだ会ったばっかりなのに?」
「ふ、話さずとも……御魂を見れば如何様な人物か分かる。これより、お前は我が子同然だ」
「親子、ということ?」
「……そうだな。我とお前は親子だ。さあ…思うように、生きるのだ」
「え、ギラティナは……?」
「……我はまた、空虚に戻る」
その途端にギラティナは哀しげに顔を伏せた。
「そんな……」
霊界から、私を拾ってくれたのに。
何か、何か出来ないのか……。
「考えていること、良く分かるぞ。もしも……我を連れ出したいのなら……」
「連れ出したいのなら?」
「……我に会いに来い。我を、捕まえてみせよ」
ギラティナはそれだけ言うと消えた。
そして私の意識もまどろみに沈んだ。
その後……目が覚めると、赤ん坊になっていたのはとても驚いた。
それからは数年、元気に成長し念願の旅に出て……とても強いジムリーダーと四天王、チャンピオンのシロナさんと出会って、ようやくギラティナの居場所を掴んだ。
もどりの洞窟に、霊界に繋がるという部屋があると。
間違いなく、そこにギラティナがいるんだと確信していた。
「ただいま、ギラティナ」
「……ヒスイか」
最初に見た時とは少しだけ姿が違った。
聞けばフォルムチェンジというものらしい。
「迎えに来たんだ。ギラティナに……世界を見せるために」
「ふ、ふははは!御魂が光満ちている……大きくなったな、ヒスイ」
「もちろん!私、頑張ったんだから」
そしてモンスターボールを投げて。
「一緒に行こう!」
「あぁ、良いだろう」
ギラティナに還ってきたんだ。