深紅の石榴
□prologue:悪魔と夜叉
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「……たしか、こう……だった……はず、だ、と、思う」
記憶を確かに、ガジュマルの葉と爬虫類の鱗をすり潰す。
天井から入ってきた恭衡が、そんな私を見て声をかけてきた。
「……何をなさっているのですか、御前」
「ん?ああ、この間遊びにいった時に、
久秀から面白い薬の作り方を教わってな、作っていたところだ」
「………松永とか……そういう危ないことしないでくださいよ」
「まあまあ、楽しいし」
「……………飲んじゃ駄目ですよ」
「……駄目かな」
「駄目です」
思ったよりも厳しい声で制止され、少し残念な気持ちになる。
飲まなかったら勿体ないじゃないか。
「……効能は?」
「滋養強壮」
「……怪しいことこの上ないですね」
「……そうか?」
「……あの松永が大人しくそんな真っ当な薬を教えるとは思いませんし」
「………真っ当…ではないな、確かに」
「でしょう?」
「この薬を飲むとな、何故か猛烈に阿波踊りがしたくなって、
それから急に力がついて元気になるんだそうだ」
「何ですかその訳の分からない薬……」
「まあまあ♪」
私は軽く手を振って、恭衡のあきれた顔を掻き消した。
彼は少し笑って、私の右手指を示した。
「御前、手、薬付いてしまっていますよ」
「あ、本当だ」
私はつい思わず、それを舌で舐めとった。
「……あ、舐めちゃった」
「ごぜええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!!」