赤い果実

□条件
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朝方、俺と小十郎とで千華に会いに行くと、彼女は未だ眠っていた。
その傍らで、小十郎の姉、喜多さんが本を読んでいる。
夜の間の見張りにと、小十郎が無理矢理頼み込んだらしい。

「Goodmorning,喜多さん。千華の様子はどうだ?」

「お早うございます、政宗様。
千華はよく眠っていますよ。夜中に一度目覚められて、少しお話をしました」

それを聞いて、慌てたのは小十郎だ。
がしっと姉の肩を掴み、相変わらずの怖い顔を更に険しくして心配する。

「姉さん、大丈夫か!?怪我はないか、襲われたりしなかったか!?」

「問題ないよ。さあさ、政宗様の前で取り乱さないで頂戴」

「あ、ああ、政宗様、申し訳ありません、しかし…」

「うるさい子だね、第一、襲われたとき用にって、
あんたがこれを持たせたんじゃあないか」

そう言って喜多さんが懐から取り出したのは短刀。
なんだか小十郎の中の黒衣夜叉へのイメージが分かった気がする。

「……………………………ん………ぅ、んん……………」

不意に、布団に転がっていた千華が動いた。
三人でそちらを見ると、彼女は、仰向けの状態から、ゆっくりと右に寝返りをうち、

「…う!いぎゃあ!」

飛び起きた。

「……………!………!!、!?」

無言で悶絶しながら辺りを見回し、赤面する。
頬が弛み、肩が震えるのを抑えきれなかった俺は、その場で小さくうずくまった。

「だ、大丈夫かい?」

抑えきれなかったのは喜多さんも同じな様で、若干声が震えている。

「……へいき」

「そう…かい。…………傷も開いてないようだね」

「……………」

震えたまま、ちらりと千華を見やれば、不機嫌そうに睨まれた。

「何を見ている」

「………いや、まさかあんな声が出ると思わなくて」

「……傷が治ったら覚えてろよ」

「怖えぇ女」



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