仮面ライダーディライト-世界の光導者-

□第12導 悲しみ無き明日
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?―お兄ちゃん!助けてっ!

―こ、これはどういう事だ…?また「あの」光景が…!?ア、アスミッ!?

―お兄ちゃんっ!!…カムイお兄ちゃん!!助けてっ!!

―ま、待てっ!!アスミッ!!

―お兄ちゃぁぁぁぁんっ!!!!

―アスミィィィィッッッッ!!!!



「はっ!?また…あの夢か…また俺は…くそっ!!」

目覚めたカブキは、夢の中での自分に苛立ち、拳を叩き付けた。どうやら、何度も同じ夢を見ている様だ…。

「…とりあえず朝食の準備をするか…。」

少し落ち着きを取り戻したカブキは、朝食の準備をするべく台所へと向かった。すると…

「あっ、カブキさん!御早うございます!」

そこに、三角巾を被りエプロンを着けた闇影が朝食の準備をしていたのでカブキは思わずズッコケた。

「なっ、何でお前が準備をしているんだっ!?」

「何でって…一晩泊めて下さったお礼をするのは当然じゃないですか。」

「だからって…」

「御早う…。うわぁ…凄いいい匂いがする。」

「凄っげぇ旨そうなぁ…これ全部闇影兄ちゃんが作ったのか?」

起きてきたカスミとキョウスケは闇影の作った大量の料理を見て賞賛した。

「うん!沢山食べてね。他の皆も起きてくるからそろそろ座って。さ、カブキさんも。」

「はぁ…こいつを泊まらせたのは間違いだったな…。」

カブキは闇影を泊めた事を後悔し、額に手をあてながら食卓に着いた。



「綺麗にするのは掃除♪御歳暮品はソーセージ〜♪…っと!」

その後も闇影は、楽しそうに家事をしたり、子供達の遊び相手になったりしており、今も訳の分からない歌を歌いながら菷で掃除をしていた。

「さって!一通り終わったし、皆のおやつに団子でも作ろっかな!」

この世界での闇影の役割は和菓子職人の様であり、それを活かして子供達のおやつを作ろうと考えた時、カブキが現れた。

「煌…。」

「あっ、カブキさん。どうかしましたか?」

「何故、お前は俺を守ろうとする?」

「何故って、それは…」

「あの二人が音叉を狙っているから…だけでは無いのだろう?」

カブキは、闇影が何故昨日今日会ったばかりの自分を守ろうとするのか、巡と周が音叉を狙っているだけでは無いと思い、その真意を尋ね出した。

「…貴方は、昔の俺とよく似ているんです。誰も信じられなかった自分と…。」

「何?」

「だけど、ある人にこう言われたんです。『人を信じられないのなら、人を信じられる自分を信じてみろ。』…と。」

「人を信じられる自分を…信じる…。」

「今の自分があるのはその人のお陰なんです。だから、俺にしてくれた事をやればカブキさんも変われるんじゃないか、と思ったんです。」

なんと、闇影も嘗ては他人を信じられない人間だったのだ。今迄の行動も、「ある人」の言葉により自分が変われた為、自分にしてくれた事をカブキにしてみようと考えての行動の様だ。するとカブキは、口を開き…

「…俺は、いや俺達は…人間に見殺しにされたんだ。」

「…えっ!?」



「…♪」

一方、カスミ達は闇影へのお礼の為に川原で綺麗な石を探したり、花を摘んだりしていた。どうやらカブキが闇影を助けた事を皆薄々気付いている様だ。

「ヒナカ、それとても綺麗ね〜。闇影さん、喜ぶよ。」

「…♪」

「(闇影さんが来てから、よく笑う様になったわね…本当に良かった。)」

ヒナカは、カスミに摘み集めた花を綺麗と言われ頷きながら笑みを浮かべた。闇影が来てから今迄以上に明るくなった妹を見て、カスミも嬉しそうに笑みを浮かべていた。その時…

「…!!」

突然、黒く太い何かがヒナカを捕らえ、そのまま彼女を引き摺る様に連れ去っていった。

「ヒナカ!ヒナカァァッッ!!」

「カスミ!ヒナカ!どうしたんだっ!?」

「キョウスケ…ヒナカが…ヒナカが…ぐすっ…。」

「泣くなよ!急いでカブキさん達に知らせようぜ!」



「俺の家族は代々、魔化魍から人を守る為に戦う鬼の子孫なんだ。」

「鬼の…子孫…。」

「当時の俺も、人を守る事を誇りに思いながら戦い、旅をし続けていた。だが…」

「だが?」

「ある村から、大型の魔化魍の討伐の依頼を受けて、そこに赴いた。流石に大型相手には俺達だけじゃ手が足りないから村の連中にも多少の協力を頼み了承してくれた。ところが…。」

カブキは少し顔を険しくし、血が出る程拳を握りながら話を続けた。彼がそれほど強い憎悪を抱くその事実とは…

「奴等は最初から村を捨てるつもりで俺達にその魔化魍を押し付けてさっさと逃げやがった…!!あの連中は、俺達を身代わりにする為に依頼をしただけに過ぎなかったんだ!!」

「…!!そんな…!!」

「結局俺達だけで戦ったが、力の差は歴然…俺以外皆喰い殺されたよ…。父も、母も、俺の妹も…!!」

カブキが人間不信になった理由―それは、守ろうとした人間達により文字通り「生け贄」にされてしまい、それにより魔化魍に家族を殺された事が原因であった。

「辛うじて生き残った俺は、それ以来他人を守る事を止め、魔化魍に親を殺された子供達を救う為だけに戦う事にした…。」

「御自分と同じ境遇の子供達を放っておけなかったからなんですね…。」

「…。」

そして、自分の様に家族を失った子供達を救うべく「かぶきの庵」を築いたと言う…。話が終わった後、二人は暫く沈黙していた。その時…

「「カブキさ〜ん!!」」

カスミとキョウスケが血相を変えながら、闇影とカブキの下へ走ってきた。

「二人共、どうしたんだい?」

「ヒナカが…拐われたんだ!!」

「!!…何だとっ!?」

「太くて黒い何かがヒナカに巻き付いて、遠くへ連れ去っていったの…。」

「(太く、黒い何か…まさか…!!)…ヒナカが最後にいた場所迄案内しろ。」

「えっ?何で…?」

「いいから早くしろ!何処に連れ去られたのかが分かるかもしれないんだ!!」

「う、うん…。」

カブキは、ヒナカが最後にいた場所迄案内する様子供達に言った。



―花畑


「此処からどの方角に連れ去られていったか分かるか?」

「えっと…多分あっちの方だけど…。」

カスミは、ヒナカがあの黒い何かに連れ去られた方角をカブキに聞かれ、その方向に指を差した。

「(やはり『奴』か…!)解った…後は俺に任せてお前達は家に戻ってろ。」

それを見たカブキは、子供達に庵に戻る様促し心当たりがあるのか、カスミが指を差した場所迄行こうとした。

「待って下さい!俺も行きます!」

当然、闇影もカブキについて行こうとしたが…

「お前、さっきの話を聞いてなかったのか!?俺は…」

「貴方こそ忘れたんですか!?俺が貴方を守るって!!」

「なっ…!」

「それに、もし相手が複数だった事を考えたら、一人でも戦える人間がいた方がいいでしょう?」

カブキは闇影が来るのに無論反対だが、それでも尚、「自分を守る」と言う彼の言葉に少々たじろいだ。

「カブキさん。闇影さんを信じてあげて!」

「カスミ…。」

「俺からもお願いだ!この人もとーてーも強いから、一緒に戦えばどんな魔化魍なんか目じゃないぜ!」

「キョウスケ…。」

カスミとキョウスケも、闇影を連れて行く様に頼んだ。二人が闇影を強く信頼しているのを見て、彼の「自分を信じられる自分を信じてみろ」という先程の言葉が頭を過った。そして…

「…足手まといになるなよ…。さっさとついて来い!」

「カブキさん…はいっ!」
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