仮面ライダーディライト-世界の光導者-

□第12導 悲しみ無き明日
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―森の中


「ヒナカ…無事でいろよ…!!誰だっ!?」

突然、何者かがカブキの足元に光の矢を放った。その正体は…

「はい、スト〜ップ。」

「大人しく音叉を渡せばそれで良し。渡さないと…今度は威嚇じゃ済まないわよ。あむ…。」

煙草をくわえながらドライバーを構える周と、団子を食べながら片手に同じくドライバーを構えた巡だった。

「巡…周!」

「そこを退け…貴様等に構っている暇は無い!」

「知るかよ。俺様達の仕事に関係無ぇ事だ。」

「子供の命が懸かっていると知ってもか?お前達の仕事はその子の命より大事か?」

「「!!」」

子供の命と聞くと、二人は少し眉をひそめた。と言っても宝を手に入れる為なら手段を選ばない彼等に何を言っても聞かないだろう。そう思考していた時、あの灰色のオーロラが現れた。そして…

「なっ、これは…うわぁっ!!」

「煌!!」

それは闇影を包み込み、彼の姿をこの場から消し去った。おそらく「オーガの世界」の時の様に、別空間へ移動したのだろう。

「くっ…二対一か…!!」

闇影が消えた事で此方の分が悪くなったカブキは、巡達と戦う覚悟を決めようとしたが…

「これは…あの人の仕業だな。」

「ここは一旦仕事は中断ね。私達も行くわよ!せいっ!!」

何故か二人は、音叉を奪う「仕事」を中断すると言い出し、巡がディシーフドライバーで空を斬る様に振り上げると、そこに大きな次元の切れ目が生まれた。二人がそこに飛び込む様に入ると同時に、切れ目も消えていった。

「あいつ等も消えた…!!一体どういう…煌の行方も気になるが、今はヒナカが先だ!!」

今起きた事が気にはなるが、ヒナカを救うのが先決だと決めたカブキは、再び走り出した。



「ここは…ミラーワールド!?」

闇影が移動した空間は、全ての建物が反転した空間だった。この事から、コウイチのいた「リュウガの世界」にある「ミラーワールド」だと推測したが…

「少し違うな…。此処はそれに似ただけの異空間に過ぎない。」

「!!粗方解ったよ…これもお前の仕業なんだな…紅蓮!!」

闇影が叫ぶように、自分をこの空間に移動させたのは、彼を「死神」だと罵る赤いフードの女性―紅蓮だった。

「ディライト…貴様は全ての世界に在ってはならない存在…此処で葬ってくれる!!出でよ!オーディィィィン!!」

紅蓮が叫びながら両手を拡げると、灰色のオーロラから黄金色の鳳凰をイメージしたその神々しい姿は、正に「神」と呼ぶに相応しいライダー「仮面ライダーオーディン」だった…。

『……。』

「残念だけど、此処で死ぬ訳にはいかないっ!変身!」

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

『はあぁぁっっ…!!』

闇影はディライトに変身するや否や、ライトブッカーでオーディンに斬り掛かったが…

『……。』

【SWORD-VENT】

オーディンは錫杖型のバイザー「鳳凰召錫ゴルトバイザー」にカードを読み込ませると、二振りの黄金の剣「ゴルトセイバー」を召喚し、×の字にして斬撃を防ぎ…

『くっ…!防がれ…ぐあぁっ!!』

ゴルトセイバーを広げてディライトの腕を浮かせて、その隙をついで攻撃した。

【ADVENT】

更にオーディンは、黄金色の鳳凰をイメージした自身の契約モンスター「ゴルトフェニックス」を召喚し、ディライトを襲わせた。

『ぐあぁぁっっ!!』

ゴルトフェニックスの強力な攻撃を受けたディライトは、あまりのダメージの大きさに変身を解除させられた。

「何か焦っている様だが、それで勝てる程オーディンは甘くない!」

「くっ…!早く…カブキさんの所へ行かないといけないのに…此処で…終わるのか…?」

確かに紅蓮の言う通り、闇影はカブキの手助けをしたいが為にどこが焦りを感じており、それが彼の手を鈍らせていた。その時…

「終わらせないわよ。」

突然空間に切れ目が生まれ、そこから巡と周が現れた。

「お前達…!どうやって…いや、何で此処に!?」

「貴様等も来たか…ディシーフ、ディスティール。」

「紅蓮さん。貴女には悪いけど、彼を未だ死なせる訳にはいかないのよね。」

「こいつを倒すのは、俺様達だから…な!」

「「変身!!」」

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

巡と周は、闇影を死なせないと言いながらディシーフとディスティールに変身した。

『相手がオーディンなら、これよね♪』

【KAMEN-RIDE…KNIGHT!】

『行ってきな。』

【KAIZIN-RIDE…CRAB-ORPHNOCH!】

『ハアァァ…。』

ディシーフは紺色の蝙蝠の騎士をイメージしたライダー「仮面ライダーナイト」にカメンライドし、ディスティールは蟹の特性を持った左腕が機械鋏のオルフェノク「クラブオルフェノク」を召喚した。

【ATTACK-RIDE…SWORD-VENT!】

『はあぁぁっっ!!』

Dナイトは契約モンスター「ダークウイング」の尾を模した剣「ウイングランサー」で オーディンに斬り掛かっていった。初めの内は、彼が優位に立っていたが…

『フッ!!』

『……!!?』

クラブOは、左腕の機械鋏をワイヤーの様に伸ばしオーディンを捕らえ、そこから電流を流した。更に…

『相手は巡ちゃんだけじゃねぇんだぜ!!』

【ATTACK-RIDE…LASER!】

ディスティールは水色のレーザー「ディスティールレーザー」でオーディンを狙撃した。前からDナイト、後ろからディスティール、流石に彼の分が悪くなってきたが…

『……!!』

『えぇっ!!嘘でしょっ!?そんなの…きゃああぁぁっっ!!』

『グアァァッッ!!』

それに構わず力ずくでクラブOの鋏から抜け出し、そのままの勢いで二本のゴルトセイバーを真横に振り上げて衝撃波を放ち、クラブOを破壊し、Dナイトをディシーフの姿へと戻した。

『巡ちゃん!!大丈夫っ!?』

『…流石は神のライダーと呼ばれるだけあって手強いわね…。』

『向こうが神なら、こっちは帝王でいくか!!』

【KAMEN-RIDE…ORGA!】

ディスティールがドライバーにカードをスラッシュして放つと、黒き地の帝王・オーガが現れた。そして、そのままオーガストランザーでオーディンに斬り掛かっていった。

『はっ!ふっ!せいっ!!』

『……!!』

オーガストランザーとゴルトセイバーで斬り結び、ほぼ互角の戦いを繰り広げるオーガとオーディン…そして…

『はぁっ!!』

『……!!』

オーガは僅かな隙を付き、オーガストランザーをオーディンに突き刺し大ダメージを与えたが…

『……!!』

『ぐあぁぁっっ!!』

それすら物ともしないオーディンはオーガストランザーを抜き捨て、丸腰になったオーガにゴルドセイバーで斬り付けた。

「もはやオーガに勝ち目は無い。無駄な足掻き…『でもねぇぜ。』!?」

【FINAL-FORM-RIDE…O・O・O・ORGA!】

『じっとすりゃ直ぐ終わる。』

『うっ!?』

ディスティールはドライバーでオーガを射ち抜き、オーガをストランザーオーガにFFRさせた。

『そんだけダメージ受けりゃ、いくら神様でもひとたまりもねぇだろ。』

「貴様…まさかその為にわざと…!!」

そう、ディスティールは最初からオーガをFFRさせるべく、彼(?)を囮にしダメージを負わせてから武器に変形させて止めを刺す為に召喚したのだ。

「ちぃっ…オーディン!!」

【FINAL-VENT】

紅蓮が指示すると、オーディンはファイナルベントのカードでゴルトフェニックスを召喚し必殺技「エターナルカオス」を発動しようとしたが…

『遅いぜ…!!』

【FINAL-ATTACK-RIDE…O・O・O・ORGA!】

『おぉぉぉ…撃ち斬れぇぇぇっっっっ!!!!』

ディスティールはストランザーオーガから放つ水色の光の刃のFAR「ディスティールバニッシュ」でゴルトフェニックスごとオーディンを斬り裂き「Ω」のマークを残し爆発させたが…

『……。』

爆炎が止むと、なんとオーディンは胸を押さえながら辛うじて生き残っていた。

『しぶといな…その力、戴くぜ!』

【STEAL-RIDE…R・R・R・RIDER!】

『……!!』

しかし、ディスティールのスティールライドにより、オーディンは呆気なくカードに変換、回収されてしまった…。

「まさか、ライダーまでカードに変換出来るなんて…!!」

「くっ…ディシーフ!ディスティール!貴様等がどういう了見でディライトを助けたのか知らぬが、そいつは全てを焼き尽くす『死神』…!それだけは忘れるな!!」

そう言うと紅蓮は、険しい顔をしながら灰色のオーロラの中へと消えていき、それに伴い闇影達もオーロラに包まれて元の場所へと戻った…。



「戻ってこれたわね…。」

「とりあえず礼は言っておく…。」

闇影はカブキの元へ再び行こうとしたが、周が前を遮った。

「ちょっと待ちな。これで『はい、おしまい』で済むと思ってんのか?」

「何だと…!?」

「てめぇを救ってやった報酬として、あの音叉を奪って俺様達に渡しな。」

「まぁ、命の報酬としては安い物だと思うけどね♪」

「…それが目的か。呆れて物が言えないな。」

闇影は、巡と周が自分を助けた理由を聞き怒りを通り越して呆れていた。

「俺は、自分の命を懸けてでも守りたい『宝』を救う手助けをしに行く。それを邪魔するなら…お前達でも容赦しない。」

闇影は目で鋭く睨みながら恫喝し、踵を返してカブキの元へ走っていった。

「命を懸けてでも守りたい宝…か…。」
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