仮面ライダーディライト-世界の光導者-

□第12導 悲しみ無き明日
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―森の大広場


「此処か…いい加減に姿を現わしたらどうなんだ!!黒蛇(くろち)!!」

『ホホ…相も変わらず思い上がった物言いじゃのぅ…。』

大きな地震と共に森を荒らしながら、上半身が蛇の様な顔付きをした女性の身体で下半身が無数の太長く黒い大蛇がうよめいた巨大な魔化魍「黒蛇」が現わした。一匹の大蛇がヒナカを巻き付けながら…

「……!!」

「ヒナカ!!黒蛇、貴様…!!」

『最近魔化魍が次々倒される話を聞きこの小娘を拐い誘き寄せて見れば、うぬらだとはな…。』

「何故俺を狙わずヒナカを拐った!?」

『この方が妾にとって都合が良いから…じゃのう。』

「ふざけるなっ!!貴様は此処で倒す!!家族の敵…今こそ取らせてもらう!!」

この黒蛇こそ、カブキの家族を皆殺しにした張本人の様だ。それと同時にヒナカを拐った事に強い怒りを抱いたカブキは、歌舞鬼に変身し直ぐ様音叉剣で斬り掛かっていった。

『おおぉぉっっ!!』

『たった一人で妾に勝てると思うてか…笑止!!』

『シャアァァッッ!!』

『ぐああぁぁっっ!!』

だが下半身の一匹の大蛇が勢いよく突撃し、向かって来た歌舞鬼を木が数本へし折れる程撥ね飛ばした。

「!!」

ヒナカは、そんな彼を見て声を出そうと口をパクパクさせていたがなかなか喋れず歯痒く思っていた。

『くっ…黒蛇…黒蛇!クロチィィッッ!!』

直ぐ様立ち上がった歌舞鬼は、憎悪と怒りをこめて咆哮しながら身体から黒いオーラを生み出し、再び黒蛇に向かっていった。それが彼女に吸収されている事に気付かないまま…。

『往生際が悪いのぅ…ハァッ!!』

『ぐっ…ぐがあぁぁっっ!!』

数体の大蛇の吐く炎をまともに喰らい、もう数体が先程の様に突撃された歌舞鬼は変身を解除されてしまい、その勢いで音叉が飛んでいってしまった。

「くっ…くそっ…!!」

「もう終わりかえ?ならばさっさと喰『わせるかぁっ!!』グガァッ!!」

カブキを喰らおうとした黒蛇は、ディライトの乗るマシンディライターに撥ねられ大きく身を仰け反った。

『カブキさん!大丈夫ですかっ!?』

「煌…。あ…ああ…。」

『貴様が童子と姫の言っていたディライトとやらか?少しは骨があると良いのぅ…。』

『ここで一気にケリを付けるっ!!』

【FINAL-SHADOW-RIDE…HI・HI・HI・HIBIKI!】

ディライトは、自身の影をディスクアニマル達が融合した朱色の鎧が特徴の戦士「仮面ライダー響鬼」の最終形態「装甲響鬼」にFSRさせた。

「あれは…伝説の鬼『響鬼』…!!煌…お前は一体…!?」



―何してんだよっ!?俺から離れろっ!!

―安心しろ…お前の「闇」は…俺が止めてやるっ!!



『(―さん…。)俺は…』

【FINAL-ATTACK-RIDE…HI・HI・HI・HIBIKI!】

『俺はもう…大切な人を失う悲しみを…誰にも味わって欲しく無いんだぁぁっっ!!』

ディライトとS装甲響鬼は、ライトブッカーと装甲声刃の刃に黒と赤の炎を宿し敵を斬り裂くFAR「鬼神覚声」を黒蛇に喰らわせた。しかし…

『ホホ…今何かしたのかえ?ハァァッッ!!』

『何っ!?そんな…ぐああぁぁっっ!!!!』

「煌!!」

二人分のFARを受けながらも全くダメージを負っていない黒蛇は、大蛇達の吐く炎でディライトとS装甲響鬼を焼き尽くし変身を解除させた。

「くっ…何て強さだ…!!」

「あらあら…派手にやられちゃってるわねぇ…。」

「いい様だぜ。」

「お前達…!!それは…!!」

突撃現れた巡と周は、目当ての音叉をくるくる回しながら地を這っていた闇影を嘲笑った。

「まっ、ブツが手に入ったし別にいいけどな♪」

「貴様等…。」

「怒らないの。あまり怒ると相手の思う壺よ。」

「どういう事だ…?」

「怒る…憎しみ…!!そうか!奴は怒り…負の感情に比例して力を増していく魔化魍なんだ!だから黒蛇はカブキさんに負の感情を強める為にヒナカちゃんを拐ったんだ。」

黒蛇の能力―それは、負の感情を吸収する事によりその力を増長させるのだ。ヒナカを拐ったのも、カブキの憎しみを強める為であった。

『人は負に囚われ易い愚かな存在…保身の為に村や他人を犠牲にする者、それにより憎悪を抱いたまま生きる者…そんな奴等なぞ消えて当然よのう。』

「負の感情を持つ事を愚かな事だとは…俺は思わない。」

『何じゃと?』

「確かに人は、大なり小なり他人に対して憎しみを抱いている…だが、人を思いやり、守りたいという思いがそれを打ち消してくれる!」

「思いやり、守りたいという思いが…憎しみを打ち消す…。」

「だから人と人は手を取り合って生きていける!悲しみのない明日の為に!!」

『うぬら…一体何者じゃ!?』

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!変身!」

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

『さて、輝く道へと導きますか!』

闇影はディライトに変身し、何時もの台詞を言いながらカードをドライバーに装填した。

【ATTACK-RIDE…LASER-BLADE!】

『はぁっ!!』

『ギャアァァッッ!!』

ディライトはライトブッカーから放つ「ディライトレーザーブレード」で一体の大蛇を斬り裂いた。その時…

「…キさん…って…。」

「???」

「カブキさ〜んっっ!!闇影さ〜んっっ!!皆、頑張ってぇぇっっ!!」

「!!ヒナカ…お前、声が…!!」

何とヒナカは声を取り戻し、大声でカブキ達を応援した。彼女もまた、闇影の「導き」の言葉に勇気付けられたのだ。

「あらあら、子供の期待に応えるのが大人の務めよね…周!」

「特に女の子の声援は力がみなぎるぜ…あいよ巡ちゃん!」

巡と周は、少し笑いながら音叉をカブキに投げ渡し自分達の変身ツールを構えた。

「俺は…ずっと弱かった自分を憎んでいただけだった…そのせいでヒナカをあんな目に逢わせてしまった…だが…!」

「「変身!!」」

「あの子達の、そして自分の明日の為に…俺は戦う!!歌舞鬼!!」

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

巡と周はディシーフとディスティールに、そしてカブキは音叉で歌舞鬼に変身し、ディライトの応戦に向かった。

『お前達、どういうつもりだ!?急に音叉を手放すなんて!』

『勘違いすんなよ。俺様達は子供を利用する奴が嫌いなだけだからな!』

『それに、未だ見てないからよ。自分の命を懸けてでも守りたいお宝を、ね♪』

ディライトの疑問に二人戦いながら、子供を利用する輩が嫌い、命を懸けてでも守りたい宝を見たいという理由で音叉を返したのだと言う。

『くっ…おのれぇぇっっ!!図に乗るなよ!人間がぁぁっっ!!』

ディライト達の攻撃に業を煮やした黒蛇は、大蛇同士をまとめ上げ、龍に近い一匹の大蛇に変化させ、その口から巨大な黒い光弾を放った。それによりヒナカは解放され、地面へと落ちていった。

「きゃああぁぁっっ!!」

『まずいっ!!ヒナカァッ!!』

【ATTACK-RIDE…BARRIER-FORCE!】

光弾により辺り一帯が吹き飛び、クレーターの様な物が出来た。しかし、爆風が止むとドーム状の透明なバリアに囲まれたディライト達がいた。

『残念だったな。俺様達は生きてるぜ。』

『なっ、何故じゃぁぁっっ!?』

『それは、このカードのお陰よ♪』

ディシーフは、カードを見せ付けながら「バリアフォース」により光弾から身を守ったのだと説明した。

『力を出し切ったお前に、勝ち目は無い!』

【FINAL-FORM-RIDE…KA・KA・KA・KABUKI!】

『カブキさん、力を抜いて下さい。』

『何…おわっ!?』

ディライトが歌舞鬼の背中に手を当てると、歌舞鬼は黒と黄色の鴉の様な模様が刻まれた巨大なアニマルディスクを模した「カブキアニマルディスク」にFFRした。

『行っけぇぇっっ!!』

『ウガアァァッッ!!』

ディライトはKアニマルディスクをフリスビーの様に振り投げて黒蛇の腹に直撃させた。Kアニマルディスクは回転したまま宙を浮いていた。

『これで…最後だっ!!』

【FINAL-ATTACK-RIDE…KA・KA・KA・KABUKI!】

Kアニマルディスクは、巨大なディスクアニマル「消炭鴉」を模した「カブキケシズミガラス」に変形すると、翼を広げて大きく鳴き出した。

『キィィィィッッッッ!!!!』

『グゥッ…頭が…割…れ…ガアァァァァッッッッ!!!!』

黒蛇は、Kケシズミガラスの放つ清めの超音波のFAR「ディライトハウリング」により大爆発した。



「ヒナカ、お前の声のお陰で黒蛇を倒す事が出来た。」

カブキは、ヒナカの応援により怨敵・黒蛇を倒す事が出来た事に感謝するが、彼女は首を横に振った。

「ううん。私が声を取り戻せたのは闇影さんのお陰なの。だから…」

「そうだったな…俺やヒナカの心を救ってくれてありがとう…煌。」



一方、巡と周は黒蛇が倒された場所で何かを探していた。

「お前達、何やってるんだ?」

「あったぜ巡ちゃん!!アニマルディスク!!」

二人は、三枚のアニマルディスクを見つけて嬉しそうにしていた。

「三枚揃っているからそれなりの価値はあるわね♪これが命を懸けてでも手に入れたい『お宝』なのね闇影君。ありがと♪」

「違う!俺が言ってるのは…!!」

闇影は、自分と彼等の命を懸ける価値がある『宝』の見解の違いを指摘しようとしたが…

「また何処かで会いましょ、闇影君♪」

「あばよ。」

二人は、次元の切れ目を作り出しその中へと消えて行った…。



「本当の家族みたいで素敵な絵だわ…。」

「そうですね!ヒナカちゃんも声を取り戻せて本当に良かった。」

影魅璃と闇影は、キャンバスに描かれたカブキとヒナカが手を繋ぎ夕日に向かって歩いている絵を嬉しそうに見ていた。



―奴が灰燼者であり「死神」である事は絶対の真実。それを忘れるな…。



「(先生が「死神」なんて…そんな事絶対に有り得ない…!!)」

「ん?どうしたんだ黒深子。」

黒深子は、紅蓮の言っていた言葉を思い返していた時、闇影に声を掛けられた。

「え?ううん、何でもない。それよりも…とりゃあぁぁっっ!!」

「ぐがぁぁっっ!!?」

突然、黒深子は闇影のこめかみに向かって回し蹴りを喰らわせた。

「ちょっ、黒深子ちゃん!?」

「連絡しないで外泊した罰です!反省して!!」

「ご…ごめんなさい…。」

それとは余所に、次の世界を表わすキャンバスに、黒鬼と複数の人物が国会議事堂に向かおうとする絵に変わった。

「ネガ電王の世界…青い…縞縞…。」

闇影は、黒深子の下着の色と共に次の世界の名前を言い、そのまま倒れた…。
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