仮面ライダーディライト-世界の光導者-

□第1導 プロローグ
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―とある地で、一人の男が戦っていた…。

「…はぁ…はぁ…全く…随分…しつこく…湧いて…くるなぁ…はぁ…はぁ…」

と、疲れ気味た表情をした男の名は煌闇影(きら・みかげ)。漆黒色の短髪に茶色のジャケットそして、髪と同じ色をしたジーパンと今風の若者を現わした格好だ。何故疲れているかというと…

『グォォォォォォッッッ!!!』

『ヒヘヘヘヘヘ…』

『お前の望みを言え…言わないと勝手に決めちゃうよ…「楽に死にたい」ってなぁぁぁぁぁぁっっ!!!』

見ての通り…無数の各ライダー達の世界の怪人が闇影を囲んでいるからだ。彼は襲いかかる怪人を千切っては投げ、千切っては投げ…と素手で戦っている。だが、新たな怪人は次々と現れてくる…。こんな事が続けばバテるのは当然だ。

『もう終わりか?だったらさっさと死になっ!』

『人間ごときが俺達怪人に敵うと思ってんのかよっ!』

確かにただの人間が「怪人」という異形の存在に立ち向かって戦うのは無謀だ…。


…「ただの人間」ならば…。

「…やっぱり、『これ』を使うしかないな…。」

そう言いながら、懐からカメラ状のアイテム「ディライトドライバー」を取り出しそれを腰に当てた時、ベルトが現われ巻き付いた。更にバックルを開き、一枚のカードを装填した…。



【KAMEN-RIDE…】




「変身!」


【DELIGHT!】

バックルを閉じた瞬間、電子音と共に闇影の身体に複数のライダークレストが重なり、オレンジ色のスーツに包まれ、金に近い黄色のライドプレートが頭部に刺さった、青色の複眼を輝かせた戦士、世界の光導者「仮面ライダーディライト」に変身した。

『さて…輝く道へと導きますか!!』

…どうやら、これが彼の決め台詞らしい。どこぞの電車ライダーじゃあるまいし…。

『ふざけんなぁぁぁぁぁっっっ!!!』

と、ディライトの決め台詞に怪人がぶちキレている…。当然だ。自分達に劣ると思っている人間が突然ライダーに変身し挙げ句、変な台詞をほざけば何か言いたくなるのは仕方ない…。

『死ねぇぇぇぇっっっっ!!!』

先程ぶちキレた怪人は勢いのままディライトを襲いかかるが…

『あらよっと!!』

バックステップで攻撃をよけつつ、ライトブッカーをガンモードに変形し、カードをドライバーに装填した。

【ATTACK-RIDE…LASER!】

ライトブッカーを構え、ライトオレンジ色のレーザーを三発同時に放つ「ディライトレーザー」で怪人を狙撃した。

『グァァァァッッッ!!』

撃たれた怪人は爆発音と共に消滅した。

『あーびっくりしたー…急に飛び出してくるから…。』

と驚きながら、今度はライトブッカーをソードモードに変形させ…

『せいせいせいっ!!』

『ギャァァァッッッ!!!』

目にも止まらない速度で、敵を次々と斬り裂いていくディライト。

『クソがぁ…こうなったら一気に攻め込むぞぉぉぉっっっ!!!』

『グォォォォォォッッッ!!!』

その一言で怪人数十体がディライトに一斉に襲いかかった。…だが…

『一斉攻撃か…ここは援軍を「作る」か!』

ディライトは一枚の黒いカードを取り出し、ドライバーに装填した。

【FINAL-SHADOW-RIDE…FA・FA・FA・FAIZ!】

電子音が鳴りドライバーから光がディライトの「影」を射し込む。その瞬間、影がディライトの隣に現れ、赤いスーツに銀色のアーマーを纏った金に近い黄色の「φ」の複眼をした戦士「仮面ライダーファイズ」の最終形態「ブラスターフォーム」に変化した。

『な、何だコイツ!何故影がライダーになったんだ!』

『いや、そんな事言われても…こういう仕様なんだから仕方ないだろ?』

【FINAL-ATTACK-RIDE…FA・FA・FA・FAIZ!】

ディライトは答えになってない返答をしながら必殺技用のカードを使用し、ガンモードに切り替えたライトブッカーを構えた。S(シャドウ)ファイズBFもそれに合わせてファイズブラスターを構え、二人同時に「フォトンバスター」を回る様に放った。

『こ、答えになってなグァァァァッッッッ!!』

襲いかかってきた怪人達は一瞬で消滅した。ディライトのライダー実体化能力に狼狽した怪人諸とも…。

『まだだ!続けぇぇぇっっっ!!』

ディライトの強大な能力に怯まず、怪人達はまた一斉攻撃を仕掛けた。

『あまり倒したくないんだけどね。』

【FINAL-SHADOW-RIDE…KI・KI・KI・KIVA!】

ライダーにしては珍しい発言をしながらディライトはまたも黒いカードを使用し影をライダーに実体化させ、金の鎧を纏い、赤いマントをした蝙蝠をイメージさせるライダー「仮面ライダーキバ」の最終形態「エンペラーフォーム」を実体化した。

【FINAL-ATTACK-RIDE…KI・KI・KI・KIVA!】

ディライトは素早くソードモードに切り替えたライトブッカーを、SキバEFはザンバットソードを構え、刀身を赤く光らせ剣を振るう「ファイナルザンバット斬」を怪人達に喰らわせた。

『此処までやって悪いけどもう降伏しないか?それ以上やってもそっちの被害も増える一方だし。』

なんと、ディライトは怪人軍団に降伏を勧めた。普通ライダーは怪人を倒すのが定石なのだが、このライダーだけは違う考えの持ち主らしい…。

『な、舐めてんじゃねぇぞォォォォッッッッ!!このクソがぁっ!!降伏だと!?んな事すると思ってんのかよ!さっきからふざけた態度を取りやがって…大体手前が何で追われてんのか理解してんのかよ!この…「裏切り者」がぁっっ!!』

『!!!』

ディライトの降伏勧告を全く聞かずに彼に罵詈雑言を放つ怪人。そして、ディライトは最後の言葉に強く反応した…



「裏切り者」という言葉に…。




『ガァァァァァッッッッ!!!!』

怪人は腕を大きく広げ、他の怪人達を黒いオーラに変換し体内に吸収した。

『オオオオォォォォッッッッ!!』

みるみる内に怪人の肉体は黒く染まりながら巨大化していった。さらにそれは複雑に変化し、翼を拡げ、大きな二本の角を生やした黒い影の悪魔の様な姿になった。

『グォォォォォォッッッ!!』

こうした怪人達を吸収した黒き集合体…その名は「シャドウイーヴィル」…。

『グォォォォォォッッッ!!!』

『うわっ!!』

シャドウイーヴィルは巨大な爪をディライトめがけて大きく振りかぶったが、ディライトは真横になんとか避けた。

『影の集合体か…こっちも一気に決めますか!』

体勢を整えたディライトは、左腰のカードホルダーから裏が黄色いカードを取り出し、ドライバーに装填した。

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

『はぁぁぁぁ……!!』

ディライトは両手を胸の前で覆うように構え、光の球体エネルギーをチャージして大きくし、そして…

『はぁぁぁぁっっっっ!!!』

『グァァァァッッッッ!!!』

両腕を強く突きだし、エネルギー波を打ち出した。まともに喰らったシャドウイーヴィルは悲鳴をあげながら爆発音と共に消滅した…。これがディライトのFAR「ディメンションプロミネンス」である。

『ふう…やっと終わったか…。』

ドライバーを腰から外し、ディライトから闇影の姿に戻った。 が…

「はぁ…はぁ…やっぱあまり無理するもんじゃないな…。」

闇影は、手で支えながら片足の膝先を地に付いた。最初に生身で怪人を投げ飛ばしたり、変身して必殺技を使い過ぎたのだ。疲労が激しいのも頷ける。

「…少し休んでから 動こう…。もう怪人も現れそうにないし…。」

そう思っていた瞬間…!



『ジネェェェェッッッッ!!!』

死んだと思っていたシャドウイーヴィルの分身なのか?黒い影の怪人が手から黒いエネルギー弾を闇影に向かって放った…!

「うわぁぁぁぁっっっっ!!!」

闇影はに直接エネルギー弾を受けてしまい大きな爆発に巻き込まれた。



―謎のオーロラ


背景全体が真っ黒の空間の中で、闇影は大の字で浮いた状態のまま仰向けになっていた。その表情は、まるで魂が抜けた様にやや虚ろだった。

―…あれ?ここは…何処だ?…そういや俺、敵の攻撃を諸に喰らって…それから…?…ああ、死んだんだな、俺。…て事は、ここは…地獄か…?

どうやら今いる場所を地獄と思い込んでいるようだ…。

―…ここまでか…。

嫌だ…。まだ死ねない…死んでる場合か…。こんな所で終われない…。俺には…やるべき事があるんだ…「あの人」と約束したんだ…初めて信じてくれたあの…人…と……き…さ…ん…。

闇影の意識はそこで落ちる寸前だった…。その時…

「起きて下さい…ディライト。」

闇影以外誰もいない筈の空間に黒い服を着た一人の青年が現れた。

「君は今居るのは『闇の牢獄』・・・。ここに閉じ込められた者はまず意識が薄れていき、感情が一つずつ失っていき…最後には『心』を失ってしまうんだ・・・。」

ここは地獄ではないと判明したが、状況的には何ら変わらない。だが、この青年が呼び掛けてくれたおかげで意識を取り戻した。未だまともに喋れないが…
 
「『本来の君』なら自力でこの空間を抜け出す事が可能だけど、今の状態では無理だね…。」

青年は悲しげな表情でそう呟いた。彼の言う通り此処から出る事は出来ないのか?そう悲観的になっていた時、彼は口を開いた。

「けど・・・今回は僕の力で何とかするよ・・・。」

なんと青年は此処を出る術を持っていたのだ。正に「地獄に仏」とはこの事だ。…実際それに近いのだが。そう思っている内に、青年が両腕を垂直にして瞑想した。すると…
 
―な、何だ?体が…光ってきたぞ…!

闇影の身体に光が包まれている。おそらくこれは空間移動の類だろう…。

「ディライト、君には何れ大きな使命が待っている・・・。」

―待ってくれ!使命って何なんだっ!?それに君は何者なんだ!?そもそもどうして俺の事を知ってるんだ!?

「…何時か解るよ。これは君にしか出来ないんだ。『『闇』を操る光の戦士』である君にしか…。」

―待ってくれっ!!おいっ!!まっ…て、くっ…!!意識が…

光に包まれ、闇影の意識は完全に閉じた…。



降りしきる大雨の中、一人の制服を着た少女は傘も差さずに下を向いて歩いていた…。

「……。」

少女の名は白石黒深子(しらいし・くみこ)。カチューシャかけた漆黒色のセミロングの髪に整った顔立ちと、世の男がほっとけないくらいの美少女だ。そんな彼女が何故雨の中で悲しそうな表情をしているのか?

「…どうしたらいいんだろう…私、人を…クラスメイトを…殺し…ちゃっ…た…うぅ…!」

なんと、黒深子は同級生を殺してしまったのだ。その美しい外見からとても考えられない事…だが、本当に「ただ」殺しただけなのだろうか?次の言葉でその疑問は解消される。

「わ…た…し…、ぐすっ…!灰色の化物になって…人を…人を…うぅっ…!うぅっ…!」

そう… 黒深子は一度死を経験した者が全身灰色の異形に変貌する「ファイズの世界」の怪人、「オルフェノク」に覚醒してしまったのだ。彼女がずっと悲しげな様子なのは、その後悔の念に苛まれていたからだ…。

「これから…どうすればいいのかしら…。私…。」

異形の存在になり、更に人を殺めてしまったというどうにもならない現実に苛まれる黒深子。あれこれ思考をしながら歩き続け、漸く自宅が見えてきたその時…

「ん?何だろあれ?」

自宅の前に何かの物体がある…。近づくごとにそれははっきりと見えてきた。黒深子が見た物体の正体は…。

「って!エェェェェッッッッ!!!!????」

思わず大声で叫ぶ黒深子。家の前にあるそれは「物体」ではなく…

「は…腹…減っ…た…。」

あの謎の空間から脱出した、闇影という青年だ。

「だ、大丈夫ですかっ!?」

黒深子は闇影の近くにかけより声を掛けた。闇影は今かなり衰弱している。このままでは死んでしまうだろう。

「おお…これは天の恵みかな…?林檎が…二つも…。」

そう言いながら、闇影は手を伸ばした…




…黒深子の胸に…。

「!!!!////」

幻覚を見ているのか?今の闇影には黒深子が林檎の木に見えているのだろう。そして、黒深子の胸が林檎に見えたのでそのまま掴んだのだ。だが…

「…き…」

「キャァァァァッッッッ!!!!何すんのよッ!この変態!!!!////」

「ぐぉっ!!」

幻覚を見てる事など微塵も知らず、黒深子は顔を林檎みたく真っ赤にしながら闇影の顔面にパンチを繰り出した。

「…って!ごめんなさい!大丈夫ですかっ!?」

黒深子は殴った事を謝罪し慌てて完全に闇影の身体を揺さぶりながら呼び掛けるが、完全にKO(ノックアウト)した彼の耳にそれが届く事はなかった…。

これが、「闇を操る光の戦士」ディライトと一人の少女の出会いだった…。

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