仮面ライダーディライト-世界の光導者-

□第7導 裏楽章・憂うる闇のキバの王
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―バイオリン工房・輝(かがやき)


「ぜ…ぜんぜい…。何…ぞの液体…。」

「凄ぇ臭いだぞ…。」

黒深子とコウイチは鼻をつまみ顔をしかめながら、擂り潰した「何か」を悪臭がする謎の液体に混ぜている闇影に尋ねた。

「ああ。この魚の骨はバイオリンのニスの材料になるんだ。だからこうやって混ぜてるんだ。」

「だがらっで…うぅっ…。」

「もう少しで終わるか…」

突然、インターホンが鳴り、影魅璃はすぐさま玄関まで駆けつけた。

「は〜い。」

ドアを開けると、白いジャケットに白手を着けた長髪の男が立っていた。

「あのぉ…ここって喫茶店ですか?」

「いいえ、ここはバイオリン工房です。」

「ああ、バイオリン。あれは素晴らしいですね〜。」

どうやらこの男はここを喫茶店と勘違いしているようだ。そして影魅璃の訂正の言葉を聞いても話が噛み合わない返答をした。

「コーヒーでしたら、ウチで飲んでいきません?工房の見学も自由ですよ。」

「おお、それはありがたい。ではお邪魔します。」

影魅璃の言葉を受け男はここでコーヒーを飲む事にした。そしてコーヒーが出来る迄工房をせわしなく見学した。

「ほぉ。これは素晴らしい工房ですね。」

「ありがとうございます。」

工房を称賛する男に闇影は感謝の言葉で返した。

「こう素晴らしい物ばかり見ていると胸が熱くなって『脱ぎ』たくなりますね…。」

そう言うと男の顔にステンドグラスの模様が浮かび、そのまま蜘蛛をイメージしたスパイダーファンガイアへと変化した。

『チューリッヒヒヒ…。』

「!!ファンガイア…!!」

「あっ!おい、コウイチ!!」

『ウグッ…!!』

闇影が制止する前にコウイチはスパイダーFを殴り倒した。すると…

『な、何するんだびっくり!!いきなり殴るなんて酷いじゃないか!!』

「へ?」

スパイダーFの怒りの訴えにコウイチは間抜けな声で反応する。

『この店はファンガイアを差別するのか!!「親衛隊」に訴えてやる!!』

あまりの理不尽な対応にスパイダーFは怒りながら工房を出ていき、影魅璃が持ってきたコーヒーを「いらない!」と告げ外へ出た。

「ちょっと!あのまま出ていったら大変よ!」

「そうだな、急ごう!」

闇影達が外へ出た時、スパイダーFが中年の女性に近づこうとしていた。

「あの人が危ないわ!先生!!」

黒深子は闇影に変身を促すが、スパイダーは中年の女性に向かって走り出し…

『おばちゃ〜〜ん!!!!あの人がファンガイアだからっていきなり殴って来るんだぁぁぁ〜!!』

なんとスパイダーFはその女性に泣きついていったのだ。すると…

「あんたぁぁぁぁっっっっ!!!!」

「ぐぎゃぁぁぁぁっっっっ!!!!」

その女性もとい近所のおばちゃんが此方まで菷を持って全速力で駆けつけ、コウイチをぶっ叩き三時間程説教を喰らわせた。「ファンガイアを差別するな!」「あんたどういう教育受けてんだ!」等々…。戻ってきた時には回覧板を持ちながら頭をクラクラさせていた。

「コウイチ…大丈夫か?」

「だ…大丈夫な訳…ねぇだろ…。」

「その回覧板には何が載ってるの?」

コウイチはふらつきながらも黒深子に回覧板を渡した。

「えっと…『ファンガイアとのコーラス会の募集』に『王城キャッスルドランの見学ツアー』…って、えぇっ!?」

回覧板の内容に驚く黒深子。それを横で見ていた闇影は顎に指を添えて結論を出した。

「…粗方解ったよ。この世界は人とファンガイアが共存する世界だ。」

「だからさっきの人がファンガイアを殴った事であんなに怒っていたのね。」

「ああ。此処ではそれが当たり前なんだな…。良い世界だ。」

闇影はこの人と異形が共存する世界を嬉しく思い、感動していた。

「後はこの世界のライダー『闇のキバ』を見つけるだけなんだけどなぁ…。」

三人は闇のキバことダークキバが何処にいるのかを考えていた時、二人組の男が現れた。

「…人間だ…。」

「ああ…人間だな…。」

「?どうかしまし…!!」

黒深子が尋ねた時、男達の顔にステンドグラスの模様が浮かび、ファンガイアへと変化した。だが、何故か顔にミイラの様なマスクを着けていた。

『『人間は…餌だ!ヘャアアアアッッッッ!!!!』』

突然ファンガイア達は吸命牙を浮かばせ、闇影達のライフエナジーを奪おうとした。

「うわっ!!おい!!人間とファンガイアの共存はどうしたんだ!!」

間一髪の所を回避しながら、闇影は共存について問いかけた。しかし…

『共存…愚かだな…。』

ファンガイア達はそれを無視し、無表情のまま攻撃を続けた。

「くっ…戦るしかないのか…変身!」

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

闇影は悔やみながらディライトへと変身した。

『新しい力でいくか!』

【SHADOW-RIDE…ORGA!】

【ATTACK-RIDE…ORGA-STRANSER!】

ディライトは自身の影をオーガへとシャドウライドさせ、専用武器「オーガストランザー」を召喚し互いに持たせた。

『はっ!せいっ!そりゃっ!!』

『『グガァッ!!』』

ディライトとSオーガは一瞬の隙を見せずにファンガイア達を斬りつけ、そのまま後退させた。

『止めだ…!』

【FINAL-ATTACK-RIDE…O・O・O・ORGA!】

『斬り裂けぇぇっっ!!』

『『グギャアァァァッッッ!!!!』』

ディライトとSオーガの剣の切っ先から光の刃が伸び、そのままファンガイア達を「オーガストラッシュ」で斬り裂き、彼等は硝子の様に砕け散った。その瞬間…

『な、何だ!?』

突然複数の兵士がディライト達を囲みだした。そして一人のリーダーらしき女性が顔を出しこう言った…。

「全員動くな!!私は「王牙親衛隊」副隊長のユリだ。貴様等をファンガイア殺害の容疑で身柄を拘束する!!城まで来て貰うぞ。」

『「「ええぇぇぇっっっっ!!!!」」』



―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?
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