世界一初恋
□貸し出しカード
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数週間前、付き合っていた織田律が行方不明になった。
いなくなる前日は俺の家でいつものように体を重ねていたのに。
なぜかいきなり回し蹴りをくらわせ逃走。
どうしたのかと理由を聞こうと翌日図書室で待っていたが、律は来なかった。
付き合ってからアイツがここに来なかったことは一度も無い。
放課後は図書室で待ち合わせ、が二人の暗黙の約束だった。
学年の違う俺達が共に過ごせるのは授業後の短い時間だけで、俺も律もこの逢瀬をいつも心待ちにしていたから。
だからその時は、『また明日来ればいいか』くらいにしか考えなかった。
だって放課後律が俺に逢いに来るのが日常で、俺の側にいることが普通。
ついでに俺のことが好き、だなんて当たり前だろう?
本当に、つい最近までそれが”日常"で、”普通"で、”当たり前”だったんだ。
今なら…それが世界で一番愛おしくて、奇跡みたいなものだったってわかるけど。