動き始める時・伝染する負の感情

□カウントダウン
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 悪魔……吸血鬼や魔法使いなどと同類で、それらの中でも上位に位置する種族。また、人を陥れる事を生業(なりわい)としている奴らだ。


 そして…


「目に見えぬものを操る程度の能力…」

 これは具体的にどういう能力かは分からない。……だが、

「……私の拳が止められたのは、その能力のせいというわけか」
「あったりー♪ 大気中に八割近くある大量の窒素を、手のひらに集めて受け止めたんだよ。この能力は普通では目に入らないものを操れるんだ♪ まあ、操れないものも存在するけどねっ♪」

 目の前のゼクスというガキは、不気味にも隠す様子もなく答えた。

「後、さっきの切断カッターは、大気中の酸素を使ったんだ。流石に頑丈な妖怪とかはバラバラ無理だけど、人間みたいなヘロヘロはバラバラ可能だよ♪」
「……何でそんな事まで話す?」

 あまりにペラペラ話してくるので、優也も疑問を抱いて聞いてくる。元に浅い傷で済んでいる優也なので、コイツの言ってる事に信憑性を感じられないからだと思う。何より話してるのは、幻想郷を滅ぼそうとしてる敵。真に受けると危険なのは、私も考えていた事だ。
 だが、奴の表情がそれをあるものに変えていた。仮に嘘を吐いてるなら、そんな表情はしないと思う。
 人を見下すような表情はしないと思う…。

「それ聞いて、君たちは何か対策が取れるの? 僕の能力で使ってる物質をまさか取り上げる? ぷふっ、はっきり言って、君たちが僕に勝てる見込みはないと思うけどなぁ」
「そんな事ない! ぜーったいあたいたちであんたを倒してやる!!」
「へ〜、どうやって倒すのかな、おバカな氷精さん?」
「お、おバカじゃないもん!!」

 コイツの挑発に似た言葉に、チルノは言い返した。これだけ聞くと、ガキの口喧嘩のように聞こえるが、そうじゃないから本当に困る。

「ふ、ふん! その能力が正解なら、ユーヤの能力で受け流せるわ! それを軸にすれば、あたいたちでも倒せなくない!!」
「「!?」」

 チルノにしてはしっかりとした考え方だったので、私、優也と驚いてしまう。支離滅裂な事を言うと思ったから、尚更それは大きかった。

「あれ? どうしたの二人とも?」
「いや……思ったほど的が外れてなくて…」
「ああ、自分が倒すとか言うと思ってたからな。これは少し予想外だった…」
「むぅ……あたいだって考える時は考えるよ…」

 まあ、チルノの言う通りで、コイツの能力に太刀打ち出来そうなのは、この中では確かに優也の能力だけだ。正直、それだけでは歯がゆいが…。
 
「ん? ああ、さっきの。どうしてバラバラにならなかったのか疑問だったけど、それで納得だね♪ ただ、その能力があっても、身体能力で僕を上回ってないと意味ないよ♪」
「確かに優也とお前では身体能力が違う。だが、それをサポートする者がいれば互角に戦える」
「そうだそうだーっ!」
「ふ〜ん、あくまでも僕に勝つ気なのかー。でも、先に彼女をどうにかした方が良いと思うけどねー」


 この言葉を聞いた瞬間、私は凍りつく感じを覚えてしまった。
 いや、まさかな…。


「……この異変は貴様が行ってる事だよな?」
「ん〜、違うよ。可笑しな事を聞くね♪」
「貴様以外に誰が居ると言うんだ…」
「頭悪いなぁ。僕以外と言ったら、彼女しかいないでしょ?」
「……っ!?」

 奴が腕を上げ、指差したのは……床に横たわってるパルスィだった!

「もちろん、キッカケを与えたのは、嫉妬の厄を返した僕だけどね。でね、その量が多かったためか、彼女の能力が暴走を起こしちゃったんだー♪」
「ぼ、暴走…!」
「そう♪ 例えるなら、大雨でダムが崩壊したってとこかな? あっ、幻想郷にダムないから分かんないか♪ まあ、とにかく、広範囲に嫉妬を放出するようになったんだ。ちなみに今も放出は続いてるんだよ♪ 
 正直、ここまでしてくれるとは思わなかったから、僕は敬意の意味を込めて「お嬢様」と呼んでるんだ♪」

 頭が真っ白になった…。
 奴の言ってる事が正しいなら、パルスィはもう…。

「ふ……ふざけるなっ! この異変は貴様の能力で起こしたんだろ!? その能力で嫉妬を放出したか、暴走状態のパルスィを良いように操ってるんだろう!?」
「確かに僕の能力は嫉妬を放出する事はできるよ。目に見えないものを操るから当然だね。でも、ここまで広範囲だと僕でも限度があるんだよねー。後、人の心理系を操るのはちょっとに・が・て♪」
「う、嘘を━━」
「仮にそれが出来るなら、厄を奪った時点でそうしない? わざわざこんな所まで行かないよ」
「っ!!」
「あはは、残念でしたっ♪」

 この異変を終わらすには一つしかないのか…。

「ゆ……勇儀?」
「ど、どうしたの?」


「あはっ、分かってない、おバカな君たちにも教えてあげるよ♪ 君たちがこの異変を終わらすには、パルスィお嬢様を殺さないといけないんだ♪」

 
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