夜空に消えた光・譲れない想い

□辛口→甘口→超甘口
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「ねえ、大ちゃん先生! この人、最後にどーなったの?」
「えーっと、この人はね…」


 こんにちは、大妖精です。あの異変から早三日経ちました。
 この三日間で幻想郷に残っていた嫉妬は完全に消え、いつもの平穏な日常に戻りつつあります。嫉妬にかかっていた人たちも、私と同じように回復へ向かってるみたいですしね。


「ああっ!! 子供たちが振り向かないのが妬ましいっ!!!」
「……」


 ただ、個人差ではありますが、治るのに時間がかかる人はいるようです…。
 この声は保健室から叫び喚く慧音さんの声です。実はついさっきまで何事もなかったかのように授業をしていました。完全に嫉妬の影響はなくなったと思ったのですが、授業途中でこのような発言を連発…。

「あはは、けーね先生の声がここまで聞こえるよ!」
「頭突きを止めてくれれば振り向くんだけどねー」
「ねー」
「でも、僕にとって、先生の頭突きはKAIKANだね♪」

「おしゃべりはダメだよ!」

 結局、そこから戻らず仕舞いになってしまったので、保健室に向かわせて様子を見る事となったのです。
 そして、怪我をした?渋井丸先生の代役で算数の授業だけ任された私も、急遽、慧音先生の歴史の授業まで受け持つ事になっちゃいました…。

「それでアイツの嫉妬も凄かったんだぜ!」
「え? だれだれ?」

「こらっ! おしゃべりダメっ!」

 授業内容は教材を確認すれば分かると思うけど、慧音先生の授業スタイルまではそっくりそのまま真似する事はできない。でも、出来るだけそれも真似ないといけない。
 慣れてる子供が混乱するといけないからね!

「今度喋ったら、慧音先生みたいに頭突きするよ! いいねっ!」

 よし、何か慧音先生っぽい! 後は子供たちが大人しく━━



『……よっしゃーーっ!!!』



「へ?」

 お……大人しくなるどころか(主に男の子たちが)騒がしくなってる!?

「ほ、本当に頭突きするよ! 私のも結構痛いんだからねっ!」

「僕からお願いします!」
「いや、僕から!」
「僕でも良いですよね!」
「俺、俺、俺!」
「俺だーーー!!」

 れ、列を作って並んでる!? 痛いのが怖くないのぉ!?
 周囲の混乱の中、一人の女子生徒が私に声をかけてきた。

「あ、あの〜、大ちゃん先生。さっきの言葉はちょっと訂正した方が…」
「な、何で…?」
「慧音先生みたいに頭突きに慣れてるなら別に良いですけど、慣れてない人がやったら下手すると接吻してしまいますよ?」

 接吻…………つまり、キス!?


「ごごごゴメン! 頭突きなし! 頭突きなしぃ!!」

 
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