夜空に消えた光・譲れない想い

□ダメダメな二人
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「ちょっとこっちに来い!」
「ま、マリサ、何すんのよ!」

 私が腕を引っ張ってきた事に、チルノは困惑しながらも怒った口調で言ってくる。
 いきなり自分の腕を引っ張って来られたら不機嫌になるのも無理ない思う。ましてや今の今まで大好きな奴とくっついてたからな。だが、今はそんな事を言ってられない。

「良いからこっちに来い!」

 やがて、優也とは距離が離れてるであろう部屋の隅まで引っ張り、それを確認した私は「むきゃーっ!」と抵抗するチルノの腕をパッと離した。抵抗した勢いからか、すってんころんと転ぶチルノ。

(やっぱ、Hだな…)

「いたたた……も、もう! いきなり何するのさ、バカマリサ!!」
「さ〜〜て…」



グリグリグリグリ…



「むきゃあああっ!!」

 イライラのピークはとっくに過ぎていた。相変わらず文句の垂れるチルノのこめかみ部分を拳で挟みグリグリと回す私こと霧雨魔理沙。

「こっちが言いたいセリフだぜ、このま・る・きゅ・う! いつまでもキスの一つや二つで焦れったくなりやがって!!」
「なっ!? ななな何でその事をマリサが知ってるのよ!?」
「大妖精から聞いた! 二回目はお前からやったって事もな!」
「ふ、ふえっ!? い、いや、ちがっ、二回目は気づいてたらっていうかっ!! ユーヤを許したかったっていうか……だから、ホントにやったわけじゃない……っていうか、って痛い痛い痛いっ!!」

 うじうじと力なく弁解するチルノの姿にまたイラッと来てしまう。普段Hのこいつの姿を知っているだけに余計イライラする!

「お前はこいしか! いや、こいしでもそこまでやんないぜっ!!」
「ちゅっ♪ えへへー、もしかして呼んでくれた〜♪」
「……って、呼んでないぜ! 無意識にこっちに来るな!」
「ちぇ。せっかく周りが聞き耳を立ててるよ〜って忠告しに来たのになー」

 こいしは頬を膨らませながらしぶしぶと戻っていく。こいしの言う通りで周りのほとんどは私たちの方に聞き耳を立てていた。私の声が大きかったのもあるんだろう。

(……少し落ち着いた方が良いな。イライラをぶつけるためにここまで引っ張ったんじゃない)

「うぅ〜……はにゃせー…」
「あ……ああ、悪い悪い。ほらよ」

 チルノのこめかみから拳を放した私は、自分を落ち着かせるため一度深呼吸をする。落ち着いたのを確認した所で、私はチルノにこう説いてみた。

「なあ、チルノ。本当は好きって伝えても分からない優也に、どうしても自分の気持ちをって思わずキスしちまったじゃないのか?」
「えっ…」
「優也を許したくて思わずっていうのは分かる。でも、自分の気持ちを伝えきれない焦りみたいなものがお前の中にあったんじゃないのか?」
「……」

 キス以前の事を思い出してるのか、恥ずかしそうな表情で黙りこくってしまうチルノ。そんな様子を見て、私は小さくなったその肩にポンっと手を置く。

「確かに優也は鈍感だし、好きって言っても親友とか言っちゃう奴だけど、ずーっとその状態が続くわけじゃないんだぜ?」
「……マリサは先にキスしちゃダメって言いたいの?」
「いや、むしろ優也にはその大胆さは凄い良かったぜ。ただ、その大胆さを口でも示してみたらどうだって事だ」
「口で言っても同じだよ。マリサだって分かってるじゃん。今までだって…」
「ははは、それもそうだったな。でも、"今は"どうだろうな〜」
「え? 今…って?」
「それは伝えてからのお楽しみだぜ♪ つーか、その前にぎこちなさの方をどうにかしろよ♪」

 そう笑顔で勇気づけた後、横目でアリスが居る方に視線を向ける。

「あっちはとっくに終わってるらしいな。よーーし…」
「え? ちょ、ちょっ…まだ…」

 向こうの状況を確認をし終えたので、私はその方向へとチルノを進めて、

「もう一回気持ち伝えて来い!」
「うわっ!?」


 後押しの意味を込め、その小さな背中を押した…。

 
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