夜空に消えた光・譲れない想い

□夜空に拡がる星空の中…
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「この三日間、ありがとうございます。皆さんが心から楽しんでもらえたようで何よりです」


 ちょうど夕方になった頃、招待を受けた私たちは地霊殿玄関前にてさとりやペットたちの見送りを受けていた。

 実は私たちの個人的な私情や、地底の熱い環境面などを考慮して、さとりは二泊三日で夕方頃までと事前に了解を得ていたのだ。招待状にことこまやかで丁寧に書かれてあったのを今でも思い出す。
 環境面では特にそうなんだろうな。脆い奴も多いし、三日でも長い方だろう。

(私はそういうのがないから平気なんだけどな。後、暇だし)

「でしたら、まだ泊まっても宜しいですよ?」
「おおっ、じゃあ泊まっても、いや、どうせなら住みついても良いか♪ 魔法の実験をするスペースがなくて困ってたんだぜ♪」
「片付けなさいよ…」
「流石に移住までは難しいですね。部屋を汚くされるのもちょっと…」
「わ、私はそこまで部屋を汚くしないぜー?」
「あなたの場合、部屋どころか家全体を汚くするんでしょ?」
「う、うるさいぜっ」
 
 私の部屋の様子を読み取ったのか、やや苦笑いのさとり。
 せっかくあんなに部屋があるのに、何も使わずに残ってるなんてもったいないぜー。

「まあ、部屋が残ってるというのは否定しませんけど、勇犠さんたちが良く宴会用に使うので、飲み相手にされるかもしれませんよ? それでも構わないって言うなら━━」
「流石に移住するのも、延長して泊まるのも図々しかったなー」
「切り替え早いわね…」
「あははは…」

「楽しそうに話してるあんたたちが妬ましいわ…」

 さとりが乾いた笑いをした直後、にゅっとパルスィが割り込んできた。


「それで……本当に何処に座るんだい? いい加減決めてもらわないとこっちが困るよ」

「ユーヤがこっち側だと目合うし、こっち側だとすぐ隣だし…」
「だ、ダメだ……どう考えてもチルノと近くになってしまう…」


「只さえ、あの二人が妬ましいのにっ!!」

 そして、相変わらず焦れったくしている優也とチルノを指差す。ちなみに二人は今何に悩んでるかと言うと、猫車の座る位置を何処にするかどうか…だ。

 元に戻った後は本当にダメダメだったよ。話はできないは、目は合わせられないは、たまたま目が合うと顔を赤らめそむけるは……そんな光景を見る度に、ため息を吐かざるを得なかったぜ…。
 しかも、お互いに無意識なのか、すぐ隣になるよう行動しやがるし…。

「まったくですよね。少なくとも離れて行動してたら…」

「パルパルパルパル…」
「パルスィさんの…厄が…多すぎる…」
「何で私たちが彼女の肩を…」
「こっちが聞きたいわよ…」

「パルスィさんが嫉妬する事も、その厄を雛さんが吸い取る事もなかったでしょうに…」
「だな…」

 二人が焦れったい行動し、それを見たパルスィが嫉妬して、その厄を必死に雛が吸収か。特に雛にとっては嫌なサイクルだったろうな。ゲッソリとしていて辻斬りとうどんの支えがなけりゃ今にもぶっ倒れそうな様子だ。

「まあ、もっと言うなら、最初の時点で私と魔理沙が上手く言えてたらね…」
「でも、仕方ないだろ。まさか気絶して記憶がなくなるなんて誰も思わないわけだし…」
「……それもそうね」

 失敗したあの後もいろいろと試してみてはいたが、精々できた事と言えばH秒間目を合わす程度の事だった。流石にその時は二人の頭に拳骨を喰らわせてやったぜ。
 また、そんな二人を見て指をガリガリさせてた奴はもちろん、無意識にとんでも発言(「結婚しちゃえばー♪」「○○○も時間の問題だよー♪」など)する奴を止めるのに大忙し…。

「「はぁ…」」

 結局、私たちに残ったのは疲労だけ……というわけだったんだぜ…。 


「本当にお疲れ様です……っと、どうなさいましたか、霊夢さん?」
「もう平気かしら? 結構待ってるんだけど?」
「あっ、そうでしたね…」

 話に夢中になっていたため、他の招待客を放置してしまったようだ。
 さとりはコホンと小さく咳払いをし、私たちを見回しながら言った。

「皆さん、異変の件は本当にご迷惑をお掛けしました。こんなお詫びになってしまいましたけど、皆さんがここに来ていただいた事は嬉しかったですし、いろいろと交流も増えて楽しかったです。また機会がありましたら是非遊びに来てください。……最も私のような心を読み取る覚妖怪と接するのは嫌悪感を抱くかも━━」
「何を言ってるのよ。嫌悪感を抱いてたらここには来てないわ。私にとっては大好きな親友だもの」

 と、自信満々に豪語する霊夢。この発言には正直驚いてしまった。

「れ、霊夢。お前、大丈夫か…?」
「何よ。あんたは嫌悪感を抱くって訳?」
「いや、そっちじゃなくて…」
「ふん。さとりの頼みだったら私は喜んで飛んで行ってあげるわ。あんたたちみたいな冷たい奴らとは違うのよ」
「何で当然のように私たちも入ってるのかしら…」
「何だか偉そうなのが妬ましいわ…」

 勝手に決め付けられたためアリスやパルスィ等は愚痴を零すが、あまりにも霊夢らしからぬ発言が続いたため困惑気味の反応の方が目立つ。
 ぶっちゃけ霊夢がこんな友情染みた事を言うのは不気味で仕方ない。他の奴ならまだ理解できなくもないが…。

「うわー……脇巫女霊夢が絶対に良からぬ事を企んでるよー!」
「こ、こら、こいし! 確かに「さとりの信用を得れば、食料や金に困らない」と考えてはいますが、そういう事は思ってても口に出してはいけません!」
「うんうん♪ ……って、あんたも口に出してるじゃないのよ!?」
「「立派な豪邸作ってやる」という遠すぎる夢も消えてしまいます!」
「さとりぃぃ!!」

(あはは、それでこそ霊夢だぜ…)

 自分中心で回ってる霊夢だしな。こっちの方が何か霊夢らしいぜ…。

「くぅ〜……と、とにかく、ご飯目的で行ってやるから覚悟しなさいよっ!」
「うにゅっ!? 私の出番はー!?」
「あるわけないでしょ!! あんたみたいな鳥頭に頼むより、自分の飛行能力で帰る方が確実よっ!!」
「そ、そんなーーっ!!」

 顔を悔しさで滲ませながら、間欠泉地下センターへと駆けていく霊夢。加えて、そこでのエレベータ管理を当然行うと思っていた空には問答無用で辛辣発言。これには空も涙目である。

「あーあ、お姉ちゃんが怒らせちゃったー」
「も、元はと言えばこいし! あなたのせいでしょっ!」
「火に弾幕を注いだのはおねーちゃんじゃん」
「火種を蒔いたのはこいしですっ!」
「こらこら、姉妹喧嘩は止めるんだぜ。周りもそろそろ帰ると思うからよ」

 ヒートアップしそうな所、私はやんわりと止めに入る。こいしは別に良いとしても、さとりは二度もそっちのけにしちゃダメだろ…。
 私の言葉と心を読み取ったのか、さとりはハッとなってこちらを振り返る。

「皆さん、気をつけて帰ってくださいね♪」
「お、おう…」
「私より胸が小さい癖にさ。ド貧乳の癖に」

 そして、何事もなかったように笑顔で見送りの挨拶を述べる。切り替えるが早かったな…。

「こいし、後で覚えてなさいねっ♪」
「っ!?」

 もとい切り替えてなかったか。
 まあ、ともかく、招待組の奴らはそれぞれ感謝の言葉を返した後、霊夢の後に続くような形で間欠泉地下センターに向かっていく。エレベータを動かすと空はギャーギャー言っているが、これに関しては霊夢と同意見だったのか皆自分の飛行能力で帰るらしい。空には悪いが私とアリスもそのつもりだ。

「さとり、招待してくれてありがとな。いつかまた来るぜ♪」
「私も暇が作れたらね」
「ふふっ、ありがとうございます。お二方も気をつけて帰ってください」

 私たちも同じようにして、さとりたちと一緒に見送ってる地霊殿を━━

「やーいやーい、おねーちゃんのばーか! ド貧乳の○乱ぴんくー!」
「こっ、こいし、待ちなさあああい!!」
「うにゅぅ!! 誰でも良いから頼ってよー!!」
「やっぱ、どうしても近くに…」
「もうぅ、どうしよう…」
「この二人、もう置いて行こうかね…」
「があああああっ、周りの奴らが妬ましいいいっ!!」

「自由ってある意味怖いわね…」
「だな…」


 えーっと、最後の方は何ともカオスになった地霊殿を後にした…。

 
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