夜空に消えた光・譲れない想い

□家族だから…
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「お嬢様、宜しかったのですか?」


 咲夜が赤池優也を案内しに行ってから数分後、役割を終えたのか、その咲夜が戻ってきた。何処か罪悪感がありそうな表情を浮かべながら…。

「仕方ないのよ。フランをあそこ(地下室)から出すにはこれしか…」

 けど、妹の為なら一人の犠牲もやむ得ない。彼が死んだ所で後に幽霊になろうが亡霊になろうが知った事か。

「しかし、彼と妹様を地下室から出す事と、何か関係がお有りなんですか?」
「……私は赤池優也が最近起こった異変の主犯だと考えている。あの男が幻想郷に迷い込んで一ヶ月も経たない間に二つの異変が起こった」
「……」
「仮に主犯だとして、フランがあの男を殺したとする。それだけでフランにはあそこから出せる口実が作れるんだ」
「つまり、幻想郷に貢献したから、妹様にその褒美として地下室から出す……という事ですか?」
「まあ、簡単に言うとそういう事よ」

 フランが少しずつ落ち着いてきたのは知っている。だけど、出してあげる口実がどうしてもほしかった。嫉妬の異変がどうであれ、私がまたフランを閉じ込めたのは事実……そんな私がいきなり出してやるなんて言える口ではない。

「ですが、彼が主犯じゃない場面は…」
「それでも良いのよ。彼が主犯だったと……嘘を吐けば」
「お嬢様!」
「ああ、もううるさいわ。さっさとパチュリーたちに夕食でも運んで上げなさい。私は今日もいらないから」

 最近は食も進んでない。フランが食卓から消えて、食欲も出なくなっていた。

「お嬢様…」
「……大丈夫よ。だから、行きなさい」

 咲夜は心配そうな表情で居続けたが、しばらくして諦めたのか静かに部屋から退出して行った。

「はぁ…」

 不意にため息が零れる。自分は妹に対して不器用、いや、不器用にしたのは自分自身だ。最初に閉じ込めた時もそんな事をせず、姉として向き合い、支えてあげれば良かったんだ。そうすれば、また閉じ込める事なんてしなくて済んだのに…。

「今更どうこう考えても仕方のない事よね…」

 私は椅子から立ち上がり、窓に付けられた真紅のカーテンを開ける。

「……今日も出てないわね」

 夜空から見えてくるのは、無限に広がりそうな星……だけ。今日も月は見えなかった。異変はまだ終わってないのだろう。まったく、霊夢は何やってるんだか…。
 私はそんな星だけになった夜空をしばらく眺める事にした。



「赤池優也、もしあなたが最近の異変と全く関係ないのだとしたら謝るわ。でも、これもフランのためなの……恨むなら不器用な私だけを恨んでね」

 眺めてる間、私はこんな事を呟いていたと思う…。

 
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