始まり
□優也の能力
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「やっと着いたー…」
ここまでいろんな事があったが、ようやくその博麗神社に辿り着いた。
博麗神社。歴史を感じる古い本殿が一つ佇み、周りに森があるだけの何処か素っ気ない神社。けど、人を落ち着かせる雰囲気があり、俺個人的にはなかなか良い所だと思う。ここの空気も何処となく美味しい。
「おーい、チルノー」
とりあえず、博麗霊夢に会う前よりも先にチルノを起こす事にする。理由はこいつの能力で背中が冷たい…。
「ふぇ……ちゅいたの…?」
「ええ、着きましたよ。博麗神社にね…」
少し寝ぼけながら聞いてきたので、背中から降ろす合間、それに対してちゃんと答えてあげた。
と、同時に……
「おーーい!! レーム、遊びに来たぞーーっ!!」
「俺が目の前に居るのに大声出すな!! 耳が痛いわっ!!」
しーーーん
「あり? 来ない?」
「……留守なんじゃないのか?」
あんな大声で呼ばれて誰も来なかったならそれしかないんじゃないのか。耳を擦りながら俺は簡単に推測する。
「でも、怪しいですね。試しにあそこの賽銭箱にお金を入れてみましょうか」
「え? 何で?」
「霊夢さんの有無を確かめるためです」
「え、ええっ!? お金を入れるだけで居るかどうか分かるの!?」
どんな最先端なんだ!? 耳を擦るのも忘れ、思わず大ちゃんに聞き返してしまった。
「あの霊夢さんですからね。では、早速…」
「あっ、待って。俺が入れる」
「え? でも…」
「いいから…」
百聞は一見にしかず。どういう事なのかは分からないが、実際に実践してみる事にしよう。
俺は賽銭箱の前に立ち、100円玉をポイッと放ってみた。
チャリーン…
「あなたねっ! 賽銭箱にお金を入れてくれた心優しきお方はっ!?」
「!?」
小銭を入れて一秒も経っていないのだが、紅白の巫女服に脇を露出させた、歳は俺と同じくらいの女の子が賽銭箱の右脇から忽然と姿を現してきた。
自分がお金を入れたためなのか、とても嬉しそうな顔をしていて、目もキラキラと輝かせている…。
「さっきのは瞬間移動です。それとこの人が博麗霊夢さんです」
「!」
一瞬で一体どうやってここまで現れたのかと、俺が疑問に満ちた表情を浮かべていると、表情を察した大ちゃんがそれに対し小声で教えてくれた。
瞬間移動ってそんなものまであるのかと驚いたが、それ以上に彼女の名前の方がインパクトが強く、同時に安心感も得た。
「お茶を用意するから上がって上がってーっ♪」
「あのー……私たちもよろしいですか?」
「そうだそうだ! あたいたちも入れろー!」
どさくさまぎれって言ったらなんだが、俺の隣から大ちゃんたちも了解を得ようとする。するとさっきまでのテンションが一転、彼女の顔はあからさまに嫌そうな表情に変わる。
「ああ、あんたたちも居たの。本当はあんたたち、特にチルノなんか入れたくないけど……まあ良いわ」
「なっ、何だとーっ!!」
承諾こそしたものの、その対応は俺とは違って冷たかった。
「ありがとうございます。ほら、チルノちゃんも行くよ」
「置いて行くわよ、バカ氷精」
「むきーーっ!!」
博麗霊夢はお金で動くという事なのか。一応巫女さんだろうに…。