夜空に消えた光・譲れない想い

□王様ゲーム
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 この王様ゲームには、さとりさんが「能力で反則近くなるので…」、こいしが「無意識で観戦した方が楽しい♪」との事で、古明寺姉妹二人だけは参加せず、それ以外の十一人全員は参加する。

 俺的には全員が不参加……いや、王様ゲーム自体やってほしくなかった。

「てか、何で移動してきたんだよ…」
「ふん」

 追い討ちをかけるように、何故かチルノも隣まで移動してきたし…。
 正直、現在進行形で喧嘩してる身なのでかなり気まずい。仲直りのために近づいて来たなら別だが、そんな気配は━━

「○ん○んちっちゃいユーヤにはかんけーないもん」
「! あっそうかよ!」

 てっきり仲直りしてくるのかと思ったのに何だよ。胸の事はずっと謝ってんのにさ。○ん○んちっちゃいとか言われる筋合いないつーの。

(まあ、確かに小さいけど。気にしてるんだよ…)


「……と、ルールはこんな感じウサ。理解できたウサね?」


 その間、ルール説明を終えたてゐは、最終確認と言わんばかりにみんなを見ていた。
 一から十まで丁寧に教えていたのを聞いたが、そもそもてゐはこの王様ゲームという遊びを何処で知ったのだろう? 幻想郷では元居た世界側の知識が若干混じっているのを見てきたが、この中のほとんどが知らなかったのを見て、どちらかと言えばあっち側の遊びだったと推測できる。

(それをてゐが知ってるか…)

 紫や幽々子さんみたいな年配の人だったら理解できるんだけどな。てゐの見た目はチルノと同じくらい幼い…。

「じゃあ、早速王様ゲームを始めるウサよ。各自クジを一本ずつ引いてくれウサ」
「……はぁ」

 さて、現実逃避はこれまでにしよう。こんな事を考えたって王様ゲームは始まるんだ。
 俺はため息を吐きながら、割り箸で作られたクジを一本引く。他のみんなもそれぞれ一本ずつクジを引いた。

(……8番)

「みんなで合わせるウサよ。せ〜〜の…」
『王様だ〜れだ?』

 てゐの合図により皆は王様ゲームお決まりの掛け声を出す。こうして女だらけの王様ゲームが始まった。

「わ、私…」

 少しオドオドしながら手を挙げたのはミスティア。最初の王様はどうやら彼女らしい。
 うん、ミスティアならそこまで悪い命令はしないな。ああ見えて根は良い奴だ。それにこの人数で初っ端から俺に当たる事もそうはないだろう。

「それじゃあ、一番最初の命令を出してくれウサ」
「……」

 あ、あれ? でも、そのミスティアが俺の方をじーっと見てるような…。

「8番は6番を抱きしめながらナデナデする!」
「はあ!? いきなり8番で俺かよ!?」

 しかも、その命令は何!? 何を考えたらそういう命令になったの!?

「その反応だと8番は優也らしいウサね。一方の6番は…」
「わはっ、わたしなのだ〜♪」
「え、ええっ!? ルーミアなの!?」
「そーなのだー♪」

 対する6番はルーミア。喜んでいるのは状況を理解できてないんだろうな。君が抱きしめられたりナデナデされたりするんだっつーの。
 ていうか、命令したミスティアが6番のルーミアで驚いてるのも何で? まるで6番はルーミアじゃないって驚き方だったんだけど…。

「意外な組み合わせになったウサね。まあ、男一人の中でいきなり当たった優也はドンマイ♪」
「……はあぁ〜」

 どうこう考えても当たったものは仕方ないか。偶然俺とルーミアが対象になっただけだもんな…。
 ため息を吐きながらもそう結論付けた俺は、ルーミアの所へと移動し、真正面で向かい合う。

「えっと……嫌になったらいつでも言えよ。すぐ離すから…」
「分かったのか〜♪」

 その了解を確認した後、俺は覚悟を決めてルーミアを抱きしめる。チルノとは違った香りが鼻に届き、ちょっとほんわりした気分になったが今は無視!

『おおーー…』

 後ろから歓声が上がってるがそれも気にせず、一目散に頭を撫でる所まで移行させた。そこまでの時間三秒。誰かしら早いと思うだろうが事実上は命令終了だ。

「ルーミア、もう終わったよ…」

 終了した事を小声でルーミアに伝える。今頃離してもらいたいって思ってるだろうな。


「ふぁ〜、おひさまみたいにポカポカしてて温かいのか〜♪ まだまだこうしていたいのか〜♪」
「……」


 が、俺の予想とは全く逆の反応が返ってきた。冗談ですよね…。

「ルーミア。冗談は後で聞くから━━」
「冗談じゃないのか! ホントにもっとこうしていたいのかー!」 

 少し怒った口調で言い返され、どういうわけかそのまま抱き返されてしまった。

『おぉーー!?』

(いや、おかしいでしょ…)

 チルノも「やだ」とか言ってすぐに離させてくれなかった事があったけど……これもどうなのよ…。

「……後十秒ちょっとな?」
「やだやだなのか! 後一分くらいこうしていたのかっ!」
「はぁ……分かりましたよ…」

 あなたも駄々をこねるんですね、ルーミアさん…。


「ゆ〜〜や〜〜…」←手に弾幕を作ってる

「チルノちゃん、我慢だよ我慢……ねっ」←てゐを睨み付けてる





 結局、この状態はルーミアの言っていた一分を軽く超えながらも続き、ようやく離せて元の場所に戻った瞬間、チルノに弾幕という名のプレゼントを喰らわされた。

「いや、何もしてないだろ!? 酷い事も言ってもいないし!!」
「……」

 チルノに抗議するが露骨にも無視されてしまう始末。理不尽だと言わざるを得ない!

「初っ端から面白かったウサね♪ じゃあ、二回目ウサ〜」

 俺としては何一つとして面白くなかったんだがな。一回目でこの有り様だ。
 心の中でそう愚痴を零しながら、うんざりしたように二回目のクジを引く。

(……4番)

「それでは、せ〜〜の…」
『王様だ〜れだ?』

「は〜〜い♪」

 子供のように元気いっぱいに手を挙げたのは幽々子さん。二回目はこの人か…。

「それじゃあ、命令を出してくれウサ」
「うふふ♪」
「……」

 そんでもって何で彼女も俺の方を見てるんだろう?

「1番は4番にしてもらいたい事を聞き受ける♪」
「4番!? また俺!?」

 そして、何でまた俺に当たってしまうのだろう? 偶然にしては少し調子が良いような…。

「4番はまた優也らしいウサね♪ それで1番は…」
「わ、私です…」
「あら、橙ちゃんなの? 残念」

 対する1番は橙。ていうか、ミスティアもそうだけど幽々子さんも一体誰に当たる事を期待してるんだ? しかも、俺は確定の上だし…。

「う〜む……とりあえず橙は優也にしてもらいたい事を言うウサ」
「う〜〜ん…」

 てゐに促され、考える素振りを取る橙。
 疑問は多いが、とにかく俺としてはスキンシップ系の部類は避けたい。理由は分からないけど、きっと後が怖いと思うから…。

「あっ! じゃあ、ルーミアちゃんのが気になったので、最初の命令と同じ事を私にしてください♪」

 ただ、そんな願いは淡くも崩れ去る。もし神がいるなら俺は嫌われているのだろうか? 真に残念でならない。

「……」
「ち、チルノちゃん。我慢して我慢…」

 どちらにしろ二回目の弾幕が飛んでくるのは避けられそうにない。理由は本当に分からないけどな…。



「うわぁ〜、ホントに温かいです〜♪」
「あはは……それは良かったことで…」

 橙の近くまで移動した俺は、ルーミアと同じようにすぐ抱きしめた後、すぐ頭を撫でました。命令自体はすぐに終わらせました……が、

「それで、それそろ宜しいでしょうか?」
「にゃあ〜、もう少しですぅ〜♪」

 橙もなかなか離させてくれません。本当にどうしてと言いたい…。

「ちなみに橙はこの温かさをどう表現するウサ?」
「優也さんは藍しゃまの尻尾のような温かさですぅ♪ 優しく包んでくれたのもモフモフ感を思い出させます〜♪」

 それに凄い表現を使ってきたよ。俺が藍さんの尻尾とか、触った事はないけど絶対に釣り合わないだろ。



"……えぇぇぇぇぇぇぇん!!"



「……今、下から声が聞こえなかったか?」
「にゃあ〜、何も聞こえませんでしたよ〜♪」

 今にも迫って来そうな、そんな勢いのある声だったんだけど…。

「……気のせいか」





 ルーミアと同じく、橙も離させてくれるまで時間がかかり、予想した通りにチルノからさっきより強力な弾幕をもらった。マジで痛い…。

「ゲホッゲホッ……チ〜ル〜ノ〜」
「……」

 チルノに怒ったような態度を取るが、今度は思いっきりそっぽを向かれる。両頬もお餅のように膨らんでいた。
 何だよ。そっちが怒る道理はないじゃないか…。


「じゃあ、三回目ウサ〜♪」

 そんないがみ合う中、王様ゲームが悠々と続けられるのはある意味辛い。
 抜けれるもんならもう抜けたいと願望を抱きつつも、切り替えるように三回目のクジを引いた。

(……7番)

「それでは、せ〜〜の…」
『王様だ〜れだ?』

「私ウサ〜! ウッサッサッ!」

 この中では一番王様になってはいけない奴に三回目は当たってしまった。今回の王様が悪戯好きのレッテルがあるてゐだった事に俺は思わず頭を抱えてしまう。

「う〜ん、どうしようウサね〜」

 そして、前二人と同じようにてゐも俺の方を見る。
 これでまた俺に当たるようだったら、俺の数字が分かるように何かしてると考えた方がいい。その何かまでは分からないが、これまでの二人は俺の方を見て俺の数字を当てている。てゐのが当たったらそこで三人目……偶然にしては続きすぎだ! 

「2番は私にカルタを見せてくれウサ」
「またお……って2番? カルタ?」

 俺に当てられたかと思って、思わず声を上げそうになったが……俺じゃなかった?

「つか、その命令って…」
「まあ、私なりのサービスと思ってくれウサ。一応、2番は…」
「あ、あたいだけど…」
「スルーで良いウサよ。カルタなんか持ってないし」
「う、うん…」

 2番だったチルノはともかく、俺も周りも含めててゐは何でこんな命令を? という顔を隠せなかった。

「私のことわざカルタ見せよ〜か?」

 そんな中、お空が自身のカルタを持ち、それをてゐに手渡してきた。てゐは興味深そうにカルタを眺める。

「せっかくだから見せてもらうウサ。おぉー……ことわざカルタは枚数が多いウサね」
「そうなんだよ! いやー、覚えるのが大変でさー」
「お空の場合、間違って覚えるんだよ。一日で覚えるのは大したもんだけどさ…」
「へえ〜、ここまで多いとなくなった時に苦労しそうウサ…」

 そんな事を一言二言呟いた後、てゐはお空にカルタを返した。
 結局、てゐは何がしたかったんだろう? 一番危なそうな命令を出すと思ったのにこの意味不明な命令…。

 まあ、本人はサービスとか言ってたから、本当にそうだっただけかもしれないな。それに俺が気にしてた事もただの偶然と認識できて良かったよ。



「なるほど……てゐさんはここまで考えてるんですね…」
「お姉ちゃん。てゐは何考えてるの?」
「次、てゐさんに王様が回ってきた時に分かるわ」
「おーしーえーてーよー」
「あっ、こらっ! 私のスカートを捲ろうと━━」
「あっれ〜、急に桃が食べたくなったぞ〜」バッサー
「こいしーーっ!!」

 
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