夜空に消えた光・譲れない想い

□ダメダメな二人
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「はぁ……私は優也をどうにかしないといけないのね…」


 チルノを引っ張って行く魔理沙を見て、ほぼ強制的に優也の方を任された私はため息を吐く。
 あの二人の事だから、別に放っておいても大丈夫な気がするんだけどね…。

「ですが、少し耐えきれなくなっている者も出てきてますのでお願いできますか?」
「さとり…」

 私の心を読んだのか何処か疲れたような様子で言ってくるさとり。理由は分からないが、耐えきれなくなっている者はさとり本人じゃないかと思うほどだ。

「まあ、私もその一人ですけど…」

「焦れったいのが妬ましいわあああああっ!!」
「ぱ、パルスィさんの厄が…!」

「ああ、パルスィ…ね」

 ちょうどその声が聞こえてきたので納得する。また嫉妬異変とか起こされたら洒落にならないわね…。

「雛さんもパルスィさんの嫉妬量に参ってますし、私も「甘い!」とか「焦れったーーい!」という心の声を四方八方から受けていますので…」
「……心を読む妖怪も大変ね」
「お気遣い感謝します…」

 周りに少なからずどころか多大な影響を及ぼしてる優也を見て、私はため息を吐く。このまま野放しというわけにもいかないか…。

「はぁ……分かったわ。とりあえず、優也にぎこちなさをどうにかするように言う…」
「お願いします…」

 何で私がという気持ちもまだあったが、あーだこーだ言ってても仕方がない。魔理沙やさとり等から任せられた限り、やはり私がどうにかするしかない。傍迷惑な話で文句の一つも言ってやりたいのが本音の所だが…。
 とにもかくにもそう割り切った私は、ガツンと言うため優也の元へ向かう。

「ねえ、優也。ちょっと良いかしら?」
「……」

 その優也はカルタを行った場所で一人座り込んでいた。その様子は誰が見ても分かりやすいほどの上の空。実際に自分の名が呼ばれた事にも気づいてない。

「優也?」
「え? チル……じゃない、アリス?」

 二回目の呼びかけで、自身が呼ばれてる事に気づく。

「やっぱり、チルノの事でも考えてたの?」
「い、いや、そういうわけじゃなくて…」
「チルノって言いかけてたのは?」
「え、えっと……あの…その…」

 やはり、チルノの事を考えていたために上の空だったのか、私の指摘にオドオドと言葉が詰まり出す優也。ここまで分かりやすい奴も珍しい…。

「……まあ、良いわ。それよりそのチルノとぎこちないようね」
「き、昨日の事があって…」
「でも、あなただったらそこまで気にしないんじゃなくて?」
「う、うん。「事故だったから仕方ない」で普段通りに接したと思うんだ…」
「優也からのは事故だけど、チルノからのは事故じゃない気がするんだけどね…」
「え? それってどういう…」
「気づいてないなら良いわ…」

 優也の鈍感さに呆れながらも話を元に戻す。鈍感がどうこうとか一々言ってもキリがない。

「とにかく、今からそのぎこちなさを取ってくれないかしら?」
「え? い、今?」
「ええ、今」
「いっ……今は無理です。後にしてください…」
「後ってどのくらい?」
「一ヶ月くらい過ぎたら?」
「面白い冗談を言うのね」
「冗談じゃなくてホントにそのくらいかかりそうなんだってっ! 今だってチルノの顔をまともに見れないし、話す内容だって全て一辺倒で終わりそうだし、それにそれに……」

 ……と、必死に無理な理由を並べまくる優也。そんな理由を聞いてる内に段々私も頭を抱えるようになっていた。目の前に居る赤池優也ってここまで女々しかったかしら…。

(あぁ……何か私もイライラしてきたわ…)

 正直、優也も魔理沙に任せたい気分だった……が、


「お前はこいしか! いや、こいしでもそこまでやんないぜっ!!」


 あっちもあっちで大変そうな声が聞こえたので止めた。流石に魔理沙に任せっきりというわけにもいかないか…。

「……という事だから、今はホントにホントに無理なんだよっ!」
「はいはい、あなたの理由は分かったわよ。でも、こういう状態を続ける事があなたのお望み? 本当はいつもみたいにチルノと接したいんじゃないのかしら?」
「それは……で、でもぇっ!?」

 ここまで言ってもうじうじ言ってくる優也にイライラはピークに達しかけていた。襟首を引っ張り、強制的に立たせた後、魔理沙が居る方向へと体を向けさせる。

「だったら! ちゃんとぎこちなさを取りなさいよ。周りにも結構影響してるんだから」
「い、いや、まだ心の準備が…それに…」
「ええい、うるさいっ! あなたのせいで私がこんな役回りになったのよ!」
「何で逆ギレ!?」

 そんなやり取りをしてると、向こうも全く同じ事をしているのに気づいたので、

「とにかく、ぎこちなさを取って来なさいっ!」
「うわっ!?」


 さっきまでのイライラをぶつけるように、女々しくなった彼の背中を思いっきり押した…。

 
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