夜空に消えた光・譲れない想い

□ダメダメな二人
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「さーて、どうなるんだろうな…」
「はぁ……疲れた…」
「何かすみません。本来は私が言うべき事なのに…」

 魔理沙さんが戻ってきた所で私は二人に謝った。あの二人にキチンと言うべきなのは私なはずなのに、魔理沙さんとアリスさんに最後まで頼り切ってしまった。何だか申し訳なさで一杯だ…。

「なーに、普段あいつらと一緒に居る大妖精と比べたら軽いもんだぜ」
「でも…」
「あまり思い詰めなくても大丈夫よ。一人じゃどうやったって出来ない事もあるわよ」
「そういうこった。むしろ誇っても良い方だぜ。私だったら大妖精みたいにあの二人と一緒に居る自信がないぜ」
「特にこんな甘ったるい中じゃね…」
「あははは…」

 でも、それは親友だからであって、二人と一緒に居るのは当然の事。それなのに…。

(い、いけない。せっかく魔理沙さんとアリスさんが慰めてくれているのに…)

 自分への苛立ちは抜けなかったが、お二方の気持ちを汲んでここは抑える事にした。今は優也さんとチルノちゃんだ。
 ちなみに周りもかなり気になっているのか、その後ろから身を乗り出して二人の様子を眺めていた。


「わはー、頑張ってなのかー♪」
「応援してる。頑張って…」
「虫たちも応援してるからねー!」
「早く決めちまいなさいよー!」
「ガンバレフタリトモ」
「てゐ、休んだ方が良いんじゃ…」

「式場は博麗神社にしなさいねー!」


 事情を知ってる仲良しメンバー等は応援してもくれていた。最後の方は……まあ少し違うようですが…。
 そんな二人は魔理沙さんとアリスさんの後押しで、今日初めて面と向かう事になっている。

「ゆ、ゆー……え、えっとね! その…」
「あ、あ……あの! ち、ちる…」

 そのため、最初はお互いどう切り返せば良いか分からないでいた。初々しい雰囲気をしばらく糖分高めで眺めてる中、

「ち……チルノっ!」
「!」

 どうにか優也さんの方が先に意を固めたらしく、深呼吸をしゆっくりと言葉に出していく。

「べ、別に気にしてないからな。あの……き、キスの事…」
「あっ……う、うん…」
「ど、どっちも事故なんだし、気にする事はないと思う。だ、だから、いつも通りに接しようぜ…」
「……」

「おい、アリス。あのバカに何を言ったんだぜ?」
「ぎこちなさを取るように言っただけよ。鈍感の方までは何も言えないわ」
「……それもそうだな」

 自分が鈍感だって気づいてないほどですもんね。鈍感を治せと言って治ったら、こんなとこまで苦労しませんよ…。

「ま、周りにも迷惑かけてるし、それに…」
「ユーヤ…」
「ん? 何、チル━━」



ギュッ…



「って、ふにゃあっ!?」
「「「!?」」」

 と、そんな悠長な事を考えていたら、何を思ったのかチルノちゃんは優也さんの腰辺りに抱き付いてきた。不意打ちのように抱き付かれた優也さんは猫がビックリしたような声を上げ、あたふたし始める。いきなりの事だったので私たちも驚いた。

「どっ、どどどうしたんだ、チルノ!?」
「……あたいのはね。事故…じゃないんだよ」
「へ?」
「……大好きだから…」
「は、はいぃぃ!? ちょ、ちょっとまっ━━」
「だからね……だから…」

 焦る優也さんに間を与えないかのようにチルノちゃんは一気に口出した。


「き、キスするカンケーになっちゃっても……ぃ、ぃい?」



『ぉぉぉおおおおおおおおおお!!!』



「……マジで大胆に言ったな♪」
「あなたもチルノに何を言ったのよ…」
「ははは、細かい事は良いだろ♪」
「うわぁ、チルノちゃん凄い…」

 ここまで言えば、いかに鈍感な優也さんでもチルノちゃんの気持ちに気づいたはず。「大好き」の辺りから優也さんも察しが付いた反応になっていたし核心も持てる。ちゃんと優也さんの心に届いたって…。

(ふぅー……後は優也さんの返事を待つだけです!)

 何だかこっちまで緊張してしまう。そんなドキドキの面持ちで私たちはその時が来るのを待った…。


「……」


「「「……」」」ドキドキ…


「……」


『……』ドキドキ…


「……」


(……あれ? 何も言ってこない?)

 私や魔理沙さんにアリスさん、そして周りのみんなが固唾を飲んで優也さんの返事を待っているが、一向にその時が訪れない。不思議に思ったのか、魔理沙さんは優也さんの様子を確かめるために近づいてみる。……と、

「…ぁぅ…ぁぅ…」フシュー
「ちょっ……こいつ気絶してるぜ!?」

『え、ええぇーー!?』

 私も思わず声を出してしまった。見ると顔を極限まで赤くし、頭には煙が立ちのぼっている。どうやら、チルノちゃんの渾身の告白に耐えきれず、優也さんは直立不動で気絶してしまったらしい。こんな事態は私は疎か、誰一人として予想もしていなかったであろう…。
 そんな優也さんを正気に戻そうと(魔理沙さんが)彼の頭を揺さぶっているが、それも全くの効果なし。煙が増す一方である。

「くそっ……さとり! 氷か何かないか!?」
「……彼の目の前に居る者に膝枕してもらえばどうでしょう?」
 
 流石のさとりさんも呆れているのか、今にもため息を吐きそうな表情でこう提案してくる。
 目の前に居る者……ってチルノちゃんの事? でも、何でチルノちゃんに膝枕…。

(あっ! そういえば氷精だった)

 最近の出来事からかすっかり忘れてしまっていた。というか、この事態のせいで忘れざるを得ない状況だった。

「なるほど、それはグットアイデ━━」
「ダメね。チルノも優也にくっついたまま気絶してるし、離そうにも離れない…」
「って、こいつもかよ!?」

 チルノちゃんも仲良く気絶していたらしい。これには私も頭がガクッと落ちそうになった。
 ま、まあ、優也さんはともかくチルノちゃんは仕方ないか。必死に伝えようって頑張ったもんね。とにかく、優也さんは起きたらちゃんと返事を返してくださいね…。

 この時の私は、いや、周りも、気絶から目覚めた優也さんはチルノちゃんの気持ちに答えてくれると信じて疑わなかった…。

 
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