夜空に消えた光・譲れない想い

□流した涙の意味…
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「……さて」


 ある程度上空まで上がった私は、メモ帳を仕舞い辺りを見渡す。
 視覚。空からの下の光景はほとんど変わらない。一面のほとんどは魔法の森と付くくらいなので緑、途中で迷いの竹林があるので黄緑色になる。そう、視覚では何も変わりないように見える。
 嗅覚。天狗の私とて、嗅覚は人並み程度……だが、違いはあった。最近だったか、私がここ周辺を飛行する際、何処からか和菓子に似たような甘い匂いが鼻に届くのだ。女性にとっては嗅ぐだけで幸せな気分になりそうな、そんな匂いだ。

「今日も…ですね」

 最近というのも、私が仕事に復帰したその日からずっとである。最初はそこまで気にならなかった私も、長期間でしかも今までこんな現象はなかった事から個人的に調査してる。こんな現象如きに私が動き始めたのは、今回の異変と繋がっているのではないかというのもあったが、やはり、一人の記者として可笑しな変化は逃さずトコトン追求したかったからだ。今回の異変に関してもそう。月が現れない事に違和感を覚え、過去の資料や情報、にとりの気象でーたを元に調べ上げた結果、何らかの理由で月が消えているのではないかという結論に至った。そして、号外にてその結論を皆に報せた。
 大きな変化であろうと小さな変化であろうと、納得するまで追及し続ける。それが私の記者魂だと思ってます。

(だったら、捏造とかするなって? そこは無視しておいてください)

「それで大体ですが、ようやく分かってきました…」

 私の鼻はあまり敏感な方ではないが、魔法の森から迷いの竹林に入る少し手前から漂っている。時間は掛かったが、私がそこを通過する度匂いは必ず鼻に届いてた……それは今日もである。

「私が鼻の利く妖怪だったら良かったんですけど…ねっ!」

 私はそこへ落ちるような速度で向かって行った。

 
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