動き始める時・伝染する負の感情
□鬼ごっこ?
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仕事先が決まり、そこから更に三日経った。
「にんぎょうや」では、仕事の内容が緩すぎる事と、店長のペースに付いていくのに苦労した。
中でも午前9時から正午で終わるまでの間、客がほとんど来ないと聞かされた時には、何のために雇ったんだとツッコミを入れてた。アシスタントが俺しかいないのに、一人で良く大丈夫だなと関心さえもする。
でも、何だかんだ、その間の雑用でどうにか落ち着いた。給料も出すと約束してくれたので、ようやく幻想卿での生活が始まったと実感も持ててる。
「さて、これからどうしようか…」
本日も仕事は正午で終わり、昼食も食べ終わっている。昨日、一昨日と同様にまた暇となった。幻想卿に来てから、暇な時間が多くなったと思う。
(まあ、学校もなきゃ当然か…)
ちなみにこの二日間は、人里内を覚えるのに使った。完全に覚えた今、何もやる事がない。潔く家に帰ろうか…。
「あっ、ユーヤ!」
そんな時、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。本当に分かりやすい声だ。
「おっす、チル…ノ?」
振り返ると、やはりチルノがそこに居たが、どこか不機嫌そうな表情だった。
「どうした?」
「もう! 何回も家に行ったのに、何でみんな留守なのさ!」
「……ああ」
なるほど、不機嫌な理由は俺が留守だった事か。そういや、今日も入れて、この六日間は全部留守だったな…。
「えーっと、ここ最近は仕事を探したりといろいろしててな。ちなみにどのくらい家に来てたの?」
「全部だよ! せっかく遊びに呼ぼうって思ってたのに!」
「ああ〜…何か無駄足にさせちゃったな」
次回から留守の時は前もって言っておこう。
「むだあし?」
「俺が家にいない状態が続いてってこと」
「む〜、ホントだよ! 心配までしちゃっふあっ!?」
とにかく、謝罪の意味を込めて、チルノの頭に手を置き撫でる。これで機嫌が直るとは思わないけど(変な声も出したし)、これくらいしか俺はしてやれないから…。
「悪かった。次から留守の時は先に言っておく」
「ぇ、えっと…」
「それに心配もかけてゴメンな。出来るだけそうさせないように気をつける」
「う、う、ん…」
チルノは顔を赤くし、カクカクときごちなく頷いた。
(……機嫌は直ってないかな?)
「これから遊びに行っても問題ないか?」
「ふぇ? あ、う、うん。ちょうど呼ぼうとしてたし……うん」
「……まだ不機嫌?」
「へ?」
「こう言っても顔が真っ赤のままだし、そうなんじゃないかなーっと」
「……え!?」
俺がこう指摘すると、チルノは頬に手をやり(体温を測ってる?)、そのまま目線を俺から外した。何か不味い事でも言ったのかと心配になる。
「チルノ?」
「な、ナデナデが久しぶりだったから…」
「? ちょっと聞こえな━━」
「な、何でもない! 何でもないから早く行こっ!」
「あ、ああ…」
結局、どういう事なのか分からなかったが、こう言ってるって事は機嫌は直っていたのだろう。気が少し楽になるのを感じた。
「じゃあ、手も放す━━」
「そ、それは……もうちょっとだけ…」
「え? あ……ああ…」