動き始める時・伝染する負の感情
□宴会in大会
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「ハクレイとうちゃーく」
ちょうど日が暮れ、辺りはほんのり薄暗くなっている時だった。
仲直りした俺たちはお互いに昼食を取った後、宴会が行われる博麗神社に向かっていた。たった今、そこに着いたというところ。
宴会の始まる時間は午後7時で、まだその時間にはなっていないが周りに座れる場所はほとんどない。木の近く、鳥居近く、社殿近くに、多くの人が居座っていた。
「おぉー、人がたくさん居るよー!」
「……チルノさん。もう宜しいでしょうか?」
ちなみに、俺はここまでチルノをおぶって移動していた。理由は罰としておぶらせろとか…。
「てか、下着の事は許してくれたんじゃないんですか…」
「そ、そっちは許したよ。でも、その後に変な事を言ったじゃん!」
「は? 変な事?」
下着の事でまだ根に持っているからだと思っていたが、何やら違うらしい。
「ほ、ほら、あんなに…かわぃぃって…」
「……そ、それなの?」
率直に思った事を口には出したけど、別に変な言葉には入らないよね? いや、むしろ褒め言葉だよね?
「ぶっちゃけ、弾幕をぶつけられた事も理解が…」
「ば、罰だもん! ユーヤがポイポイ口に出さないように!」
「は、はあ…」
口は災いの元ってやつなのか。けど、それが何で「かわいい」なのか理解に苦しむ。
(とにかく、口に出してはダメか。言わない保障はできないけど…)
「優也さ〜ん」
そんな事を考えていた時、ざわつく人だかりの中で大ちゃんの声が耳に入ってきた。
「あれ? おバカなチルノは?」
「居るよ。優也の背中に」
「そーなのだー」
俺たちの少し前方に大ちゃんたち四人が居た。人で混雑していて進みにくそうだったが、少しずつ俺たちの元に近づいて来る。やがて、完全に合流した。
「その様子だと仲直りできたんですね?」
「あ、えー……一応は…」
俺たちの様子を見て、大ちゃんは仲直りしたと判断したのか聞いてくる。仲直りしたのは事実だけど、ちょっと微妙な感じなんだよな…。
「みすちー! おバカって何よ、おバカって!」
「おバカって言ってない。Hって言ったの」
「同じよーー!!」
一方の氷精さんは、バカ発言に怒ったのか背中でバタバタしてる。俺が背負ってるって事をお忘れだろうか?
「ところで、チルノはいつまで優也の背中に居るの?」
「心地良いのかー」
「なっ……ち、違う! これは…その…」
「へ〜、何が違うの? そもそも優也が原因で行けなかったんじゃなかったっけ?」
「うっうぅー……ゆ、ユーヤ! 今すぐ降ろして!」
「あ、ああ…」
元気一杯だなと思いつつ、静かにチルノを降ろした。それを見て、またミスティアがニヤニヤ(何でか知らないけど)しながら言う。
「あれ〜? 私たちの事は気にせず、もっとおんぶしてれば良いのに〜」
「し、しつこい、みすちー!」
「しつこいくらいしないと、当の本人は気づかないじゃないの〜?」
「む、ううぅ…」
チルノは頬を膨らませて、俺を盾にするように隠れ始めた。何だか可哀想になってきたので、助け船を出してやろうと口を開く。
「あーあー……ただ今より、宴会を開始いたしまーす」
と、それを遮るかのように、やる気のない声が周囲に響いた。見ると賽銭箱の前で、博麗霊夢がマイクを片手に、めんどくさそうな表情で宴会宣言を行っていた。
『オオオオオォォォ!!!』
そして、やる気のない霊夢とは裏腹に、この言葉を待ってましたと言わんばかりに歓声が上がる。宴会を経験してなかった事もあり、この歓声にはビックリしまった。不意打ちとはまさにこの事か。
「優也さん、優也さん」
「……え? 何?」
「場所は取ってあるので、そこに座りましょう。料理等が配られると思いますから」
「あ、分かった。チルノ」
「う、うん」
「「みすちーも(なのかー)」」
「はいはいっと」
とりあえず、大ちゃんの言う通りに、全員でその場所まで移動した。たくさん並んでる木の内の一本。その下に青いシートが敷かれてある。
「ここ?」
「はい、そうです」
「料理やお酒は、みょん、犬、兎に運ばせますので、しばらくお待ち下さーい」
そこに座ると同時に、こうマイクで話している霊夢。どんな奴だと再度賽銭箱付近を見ると、霊夢に抗議する三人の人影が目に入った。どういう人たちまでは分からなかったが、抗議してる所を見ると常識は持ってそうだ。何で手伝う羽目になったかは不明だけど…。
その人たちに、霊夢は多分スペルカードを見せてる。
「じゃあ、三分以内に全て運んで貰うわよ。ちなみに過ぎたらコレだからね…」
「「「は、はいぃ!!」」」
(鬼か、あいつは…)
やはり、スペルカードだったのか、三人の顔がここからでも真っ青だと分かった…。
余談だがお酒や料理は、五分ほどで全体に行き渡ったらしい。
「霊符『夢想封印』!」
「「「ギャアアアアア!!」」」
「マジで鬼だ…」