始まり

□優也vs魔理沙 遊びでも負けられない!
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「悪い。待たせたな」
「やーっと来たか。てっきり逃げ出したものかと思ったぜ!」

 チルノとのやり取りを終えた後、俺は魔理沙の方へと相対する。
 現在、俺たちは神社の境内に出ていて、広い境内に俺と魔理沙が、賽銭箱付近に霊夢たちが観戦という形を取っている。ちなみに霊夢には何とか許可は取ったらしい。壊したり、汚したりしなければ、だが…。

(いろいろと無茶な話じゃないか、それ…)

「さあさあ、さっさとルールを決めて戦おうぜ!」
「え、えっと、ルール…ってどんなのがあるの?」
「……は?」

 既に臨戦態勢を取っていた魔理沙は、俺の発言に気の抜けた表情になる。

「弾幕ごっこを知ってて、私とやろうとしたんだよな?」
「弾幕ごっこという単語自体、魔理沙から口から初めて知ったんだ。スペルカードルールっていうのも単語だけで…」
「……マジかよ」
「そういえば知らなかったわね。簡単にこの遊びのルールを教えてあげるわ」

 戦う(遊ぶ?)前に、ここでのルールを全く知らなかった俺のため、様子を見ていた霊夢が簡単に説明してくれる事になった。
 霊夢は俺たちの間まで移動する。

「良い? 弾幕ごっことスペルカードルールっていうのは……」


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・スペルカードとはこの決闘における必殺技みたいな物で、決闘開始前に決闘内での使用回数を提示して、技を使う際には「カード宣言」をする。
・宣言が必要とされるため、不意打ちによる攻撃はできないとされる。
・宣言の際に技の名前を言う必要はない。
・体力が尽きるかすべての技が相手に攻略された場合は負けとなる。
・たとえ余力が残っていても提示した全枚数を攻略されたら、負けを認めなくてはならない。
・技の美しさにもウェイトがおかれていて、精神的な勝負という面がある。
・ガッツが尽きても負けである。
・また、必ずしもスペルカードじゃなくてもよい。

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「……と、大まかだとこんな感じよ。種族ごとのハンデを埋め合わしたものと考えてくれたら良いわ」
「なるほど…」

(このルールを作った奴は凄いな…)

 説明を聞き終わった俺は関心さえもしていた。弾幕が危険とばかり考えていたが、それをこのルールで補っているんだ。ごっこ遊びと言うよりも、スポーツに近いかもしれない。しかも、種族による上下関係もある程度補う事もできる…。

「つーか、そんなんで私に勝負を仕掛けてきたのかよ。お前バカだぜ…」
「そうね。バカのレベルはあの氷精とタメ張れるわね」

 魔理沙は俺がこんな状態だった事に呆れたような何とも言えないような、そんな表情で言う。賽銭箱に戻っていく霊夢も同様の意見だった。

「あはは……俺もバカだって認めてるよー…」

 ルールも知らない赤子同然だったのに、チルノが傷ついてほしくないって理由で咄嗟に口に出しちゃったしな…。

「そのバカに免じて、私がフェアなルールを用意するぜ!
 スペルカードは私は一枚、お前は何枚でも良い。私はお前に弾幕を三発当てたら勝ち。お前は私に一つでもダメージを与えるか、私の一枚のスペルカードを破ったら勝ちだ。これなら対等で面白いだろ♪」

 面白いかどうかは定かではないけど、普通だと勝ち目がない俺にとってこれはありがたい。俺はホッと胸を撫で下ろす。

「分かった。後一つだけ良いか?」
「何だぜ?」
「俺はさっきチルノから貰ったスペルカード一枚しかない。だから、代わりとしてこの武器を使っても良いか?」

 俺は腰に備えてある二本のサバイバルナイフを指差し聞く。本来なら人に向ける代物じゃないが、先っぽが大きく欠けていて、殺傷能力はほとんどないだろう。切り付ける事はともかく、投げ付ける事くらいは出来るはずだ。

「何かメイド長のようだな、別に良いぜ。てか、それを要求すると言う事は弾幕も出せない…って、ああ、普通の人間で外来人か。つか、スペルカードもさっき貰ったって事は白紙だろ? 本当にそれで大丈夫なのか?」
「ああ、構わない」

 何故ならこちらにも作戦があるからさ。どっかの某漫画主人公より頭は劣るけど、闇雲に戦うよりはずっと心強い。

「やっぱ、お前バカだぜ。チルノの兄か何かじゃねえのか?」
「うーん、それはないと思う。髪の色も違うし、第一、種族も違うし」
「いや、そういう事を聞いてるんじゃなくてな…」
「?」

 真面目に答えたのだが突っ込まれた。魔理沙は呆れ顔でため息を吐く。


「まあ……良いや。それで私にどう勝つか興味あるし♪」


 魔理沙は箒に跨り、地を蹴り上げ、空へ。そして、一定の距離が取れた所で向き直る。いよいよかと俺も身構える。
 俺にとって、本格的なごっこ遊びが始まった!

「こっちからいくぜ、優也!」

 魔理沙は空から、チルノのとは比べられない量の弾幕を放ってきた。それもただ迫って来るわけじゃなく、一つ一つ弾幕に緩急も織り交ぜている。

「くっ…」

 俺は弾幕をギリギリまで引き付け、必要最低限の動きでかわす。集中しないとすぐにでも当たりそうだ!

「弾幕ばかり気にしてると私に注意がいかないぜ!」

 そんな集中しなければならない時、いつの間に後ろに回り込んでいた魔理沙がさっきと同じ弾幕を放ってくる。最初に放った弾幕がまだ残っているので、前と後ろ、両方の弾幕の雨に挟み撃ち状態となってしまう。

(ちっ! まだ最初の弾幕を避けてる最中なのに!)

「だったら、横だ!」

 交互に迫り来る弾幕を目にやりつつ、足をそっちにやる。多少かすりはしたが、咄嗟の判断が功を奏したのだろう。何とか弾幕の直撃は免れる事ができた。しかし、慌てて避ける方に専念したためか、魔理沙の姿も同時に見失ってしまう。

「い、一体何処…」
「ここだぜ♪」

 


バキッ!



「っ!」

 左腕に重みを感じた。どうやら、見回すタイミングに合わせ、俺の目に入らない位置に上手く移動していたようだ。気づいた時には既に遅く、真正面から放ってきた魔理沙の弾幕の一つに当たってしまう。

「まだ弾幕はあるぜ!」
「くっ…」

 魔理沙の言う通りでまだ弾幕は迫っていた。やや焦ったがそこは何とか後方に下がって回避する。その間際、俺は腰に付けているナイフを引き抜き、魔理沙目掛けて投げ付けた。

「おっと、無駄だぜ!」

 しかし、俺と距離があったためか、まるでドッジボールのような感覚で避けられてしまう。

「スピードは良いが、メイド長ほどじゃないな。それだけだと幻想郷最速の私には到底当たらないぜ」
「……何でスペルカードを使わないんだ?」
「にししっ、それで終わったらつまらないぜ♪」

 魔理沙の考えだと、スペルカードを使えば瞬殺とでも考えているのだろう。表情には分かりやすいほど余裕という二文字が目に取れた。
 俺は息を一つ吐き出す。

「だったら、意地でも使わしてやるよ!」
「ははっ、使わせるほどの状態に持っていけるか楽しみだぜ!」

 
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